『見抜く力──リーダーは本質を見極めよ』(朝日新聞出版)酒巻久著定価:1,512円(税込み)Amazonで購入する
『見抜く力──リーダーは本質を見極めよ』(朝日新聞出版)
酒巻久著
定価:1,512円(税込み)
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 世の中にはドラッカーの著作もドラッカー関連本もあまたあるが、実際にドラッカーの教えを経営に落とし込み、会社を再生させた人物はそういない。その1人が、キヤノン電子社長の酒巻久氏だ。酒巻社長はドラッカーの教えを元に、キヤノン電子をわずか6年で売上高経常利益率1%から、10%超の高収益体質の会社へと成長させた手腕の持ち主である。

 多くの経営者、管理職層が最も知りたいであろうテーマ、「どうすれば多くの利益を出せる、強い会社にすることができるのか」。酒巻社長は、近著『見抜く力──リーダーは本質を見極めよ』(朝日新聞出版)の中で、この問に対する明確な回答を示している。酒巻社長がドラッカーに学んだ経営手法のエッセンス。その秘訣(ひけつ)を整理すると以下の三つになる。

(1)古いモノを捨てる
 
 酒巻社長は、1~2年で利益率10%超を実現することも可能だと語る。そのためには、何をすればよいのか? ドラッカーは「古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法である」(『経営者の条件』上田惇生訳、ダイヤモンド社)と述べている。

 米国のある会社の調査によると、利益率が1%ぐらいしかない会社には、売上高の20~30%のムダがあるという。古い会社であればあるほど、古いやり方が昔のまま行われているなど、ムダがたっぷりとたまっている。

 そのムダを取り去ることが、利益の掘り起こしに直結するのだ。売り上げが落ちている業界では、売り上げ減よりも早く利益を掘り起こさないと、生き残ることはできない。

(2)具体的でわかりやすい目標を掲げる

 1999年にキヤノン電子の社長に就任した酒巻氏は、「世界のトップレベルの高収益企業になろう」、そのために「すべてを半分にしよう(TSS1/2)」という目標を掲げる。

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