各社が商品開発で追求しているのは「いもらしい食感」だ。材料の配合や、加工の時間などを入念に調整し、「さっくり」「ほっこり」「イモ感」が出るよう、工夫を重ねている。一方、紫というこれまで菓子に使われてこなかった色を生かすための努力もあるらしい。

「紫いもは、あの色味が特徴です。菓子本体もさることながら、パッケージで紫色を出すのに苦労しました。お菓子にはあまりない色なので……。売り場で映えるようにと考えました」(明治の広報担当)

 どの社も、紫いも関連の商品は、藤色と赤紫を使った箱に入っている。パッケージのデザインで心を砕いたせいもあって、紫色が茶や黒などの地味な色あいの中で、ひときわ浮かび上がった印象を与える。消費者に「紫いも」がチョコレート売り場を席巻したように錯覚させているのだ。紫色のインパクトは、抹茶の緑色、イチゴの赤色などに比べてかなり強烈である。

 紫いもの関連商品には、100%紫いもパウダーが練り込まれている。近年、話題になっている「野菜パウダー」の一つで、一般消費者からも人気が高い。食材に混ぜるだけで鮮やかな紫が発色する効果がある。

 産地の農業関係者によると、「ある種類の紫いもは育てるのが難しく、いびつな形になりやすい。また味を比べれば、黄色いいもよりあっさりしている」という。このため、パウダーにして、砂糖やバターなどで風味を加え、色鮮やかな菓子に加工することは、紫いもの特徴を生かしているといえるだろう。

 色とともに特徴なのが、アントシアニンを多く含む点だ。この成分には肝機能改善や便通促進などの効果がある。健康にいいといわれる紫イモ。人気が高まったのは必然ともいえるが、食欲の秋に任せての食べ過ぎは禁物である。

(ライター・若林朋子)