彼らを背にしつつ、見られているだろうか……と自意識過剰になっていたのもつかの間。乾杯の掛け声とともに集団はそれぞれに楽しみ始め、当然のことながら、こちらのことなど全く気にしていない様子だ。何よりひとりで飲んでいる記者自身が、酒と美しい景色に酔いしれて、人の目なんか気にならなくなっている。だんだんと日が傾き、夜景へと表情を変えていく新宿の景色は、大勢よりもむしろひとりで楽しんだ方が満喫できるようにさえ思えた。

 このおひとりさま席、設置されたのは昨年からだ。そもそもは外国人の宿泊客のために始めたものだという。広報の重松愛さんはこう話す。

「ビアガーデンは、客室から見える位置にあるんです。ビアガーデンを知らない外国のお客さまが、客室から見たのをきっかけにいらっしゃることが多くて。外国人のお客さまはひとりで来られることも多いので、にぎやかな中、おひとりの方がテーブル席で過ごされるよりは、こうした席の方が楽しめるのではないかと思い、サービスを始めました」

 すると1日1~2人、決して多くはないがコンスタントな利用があったため、今年もおひとりさま席を設置したという。今では日本人客の利用の方が多いそうだ。年代は30代~40代、女性が多いが、なかには60代くらいの男性が、読書しながら景色とビールを楽しむという、優雅な姿もあったとか。さらに、時にはこんな素敵なことも起こるらしい。

「以前、おひとりさま席にいらした別々のお客さまが、飲んでいるうちに意気投合して友達になった、ということもありました」(ビアガーデンの責任者・鈴木仁さん)

 聞けば、それぞれ面識のない40代の女性と30代の男性が、おひとりさま席で飲んでいるうちに仲良くなったのだとか。おひとりさま席が出会いの場になるのだ。

 もしかすると、あなたも「おひとりさまビアガーデン」で恋が始まるかも!?

(ライター・朝比奈ゆう)