■N700系の登場から新幹線や特急車内のコンセントが当たり前に

 N700系は、東海道・山陽新幹線や、九州新幹線にも使われている車両だ。普通車の壁際の席と、グリーン車全席でコンセントが使用できるようになった。これまで時刻表を見ても、どの「のぞみ」でコンセントを使えるかわからなかったが、「N700」と書かれたものさえ選べばよくなったのは、大きな進歩といえる。事前に指定席で壁際の席さえ確保してしまえば、あとは心置きなくスマホやパソコンを使った作業が進められるようになったのだ。

 N700系のコンセントの設置について、JR東海の広報は「車内でノートパソコンやスマートフォンを使用されるお客さまも増えてきており、広く乗客へのサービスの向上のためコンセントの設置に至った」と話している。

 これ以降、JR東日本の新幹線や特急を中心に、全国的にコンセントの設置が進むことになる。2010年になると、東北新幹線で使われているE2系にも、普通車の壁際と、グリーン車全席でコンセントが使用できる編成が登場する。これは、東北新幹線で使われているE5系や、北陸新幹線で運用されているE6系へと踏襲されて現在へと至っている。

 特急車両を見ても、首都圏と成田空港とを結ぶ成田エクスプレスに使用されているE259系や、品川駅と勝田駅などを結ぶ常磐線特急「ひたち」に使われているE657系でも、全席でコンセントが使えるようになっている。いずれもN700系が登場した2007年以降の新型車両であり、いうなればN700系の登場がターニングポイントになったと言っていいだろう。

■実は通勤車内でもコンセントが設置されている

 最後に、少しだけ通勤でよく使われる車両のコンセントの話を紹介したい。

 実は、首都圏で走っているE231系(山手線・高崎線など)や、E233系(中央線・東海道線など)の通勤型車両の車内にも、コンセントが設置されている。実際に挿してみると通電しており、スマートフォンの充電ができてしまう。注意書きなどは書かれていないので、乗客が勝手に使っていいものかどうかは不明だ。そこで、JR東日本に問い合わせたところ、次のような答えが返ってきた。

「確かに、首都圏の普通列車の車内にはコンセントが設置されてあります。しかしこれは清掃用のもの。整流がされておらず、電圧の変化で機器が故障する原因にもなります。そもそもお客さまのご利用を想定したものではないので、ご使用はお控えいただきたい」

 即、盗電で訴えるといったような強い語調ではないものの、とにかくこのコンセントは乗客のために用意されたものではないようだ。新幹線や特急車内の時のような感じで使用すると、トラブルになりかねない。あくまで電車内でコンセントを使える場合は、特急料金などの追加料金を払っている時だけだと割り切ったほうがいいだろう。

(ライター・河嶌太郎)