■実は特急のほうがコンセント設置は先

 だが、この例はあまり参考にならないかもしれない。個室グリーンは一般のグリーン車よりも値段が高く、利用する人はとても限られていたからだ。そこで、一般のグリーン車や普通車はどうだったのか。

 結論から言うと、実は新幹線よりも在来線の特急のほうがコンセントの登場が早かったのだ。1997年にJR北海道のキハ283系が登場する。この車両は札幌駅と釧路駅とを結ぶ「スーパーおおぞら」などに投入され、グリーン車の一人掛けの席にコンセントが設置されている。2000年3月には、JR九州の885系が登場し、2号車の全席でコンセントが使用できるようになった。885系は特急「かもめ」として運行され、福岡県小倉駅と長崎駅との間を結んでいる。ビジネス客が多い新幹線の方がコンセントの設置が先かと思いがちだが、意外にも北海道や九州の特急のほうが先進的だったのだ。

■東海道新幹線の普通席のコンセント設置は2000年から

 では、新幹線普通車のコンセントの設置はいつから始まったのだろうか。2000年になると、東海道・山陽新幹線で使用されている700系に、コンセント付きの車両が登場し始める。しかしこれは、客室と廊下の壁にコンセントが埋め込まれており、一番前と一番後ろの座席しか利用できないものだった。一車両限定だが全席コンセントが使える885系と比べると、これは不便だ。なぜなら、急にコンセントが必要になった場合、空いている席を探しに、車両をまたいで探し回らないといけないからだ。

 しかも、同じ700系でもコンセント付きの編成とそうでない編成が混在しており(これは現在でも変わっていない)、時刻表を見ただけでは見分けが付かなかった。当時は700系が「のぞみ」に使われていたが、当日新幹線車内でコンセントが使えるかどうかはまさしく「運」頼みだった。

 結局のところ、計画的に新幹線車内でコンセントを使える時代がくるのは、2007年7月のN700系の登場を待つしかなかったのだ。

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