ドルが消滅する日が来る?
ドルが消滅する日が来る?

 投資家は、経済がどの道に進んでいるのかを示す兆候や警告に常に注意を払わなければならない。では、具体的にどのような動向に注目すればよいのか? 全米ベストセラー『ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!』(原題:The Death of Money)の中で、投資銀行家でリスク管理の専門家でもある著者ジェームズ・リカーズは、ドルと国際通貨制度の崩壊を予見している。崩壊時の大混乱を乗り切れるのは、今のうちに準備しておく投資家だけだ。そのために注目すべき「7つのサイン」がある。

1.量的緩和とアベノミクスの終了

アメリカもしくは日本の資産買い入れが持続的に縮小されて、デフレに新たな勢いを与え、資産価格と成長を抑圧するだろう。これは、アメリカでQE1(量的緩和政策第1弾)とQE2(量的緩和政策第2弾)が終了したときに起こったことであり、2012年に日本銀行が約束していた金融緩和を実施しなかったときにも同じことが起こった。だが、資産買い入れが縮小されるとデフレ効果が発生するため、1年以内にふたたび買い入れが拡大されると考えるべきだ。

2.中国の崩壊

理財商品というポンジ・スキーム(詐欺の一種)の崩壊による、中国の金融崩壊だ。中国の金融部門の他国との相互接続の度合いは、アメリカやヨーロッパの主要銀行に比べると低い。そのため、中国の崩壊は主として国内の問題になり、共産党は政府系ファンドが保有している準備資産を使って、貯蓄者を落ち着かせ、銀行の資本を強化するだろう。

だが、その後は輸出を促進し、雇用を創出し、外国為替市場における人民元を下落させる努力を再開する。それにより、安価な中国の財がグローバル・サプライチェーンにふたたびどっと流れ込むので、短期的にはデフレをもたらし、長期的にはアメリカと日本のインフレをもたらすだろう。その時点で、完全には消え去っていなかった通貨戦争が、ふたたび燃え上がる。

3.金の価格

金の価格は中央銀行によって操作されているが、無秩序な価格変動は、操作の策動が崩壊しつつあるサインだ。1オンス=1500ドルという水準から2500ドルという水準に急上昇した場合、それはバブルではなく、実物買いのパニックが始まっている。逆に、1オンス=800ドル以下に下がった場合には、投資家に破壊的な影響をおよぼすおそれがあるデフレのサインだ。

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