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変幻自在だった「小泉今日子のアイドル時代」

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助川幸逸郎dot.#小泉今日子になる方法
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 どうすれば小泉今日子のように、齢とともに魅力を増していけるのか―― その秘密を知ることは、現代を生きる私たちにとって大きな意味があるはず。

 日本文学研究者である助川幸逸郎氏が、現代社会における“小泉今日子”の存在を分析し、今の時代を生きる我々がいかにして“小泉今日子”的に生きるべきかを考察する。

*  *  *
 アイドル時代の小泉今日子の演技には、目を見張らされる点があります。台詞まわしには「経験不足」を感じさせるものの、全身のたたずまいは、役によってまったく別ものに変わるのです。

 小泉今日子が初めて出演した映画は、崔洋一監督の『十階のモスキート』(1983年)です。彼女はここで、内田裕也扮する「生真面目な警察官」の一人娘・リエを演じています。リエは、東京から電車で一時間少し離れた木更津に住み、日曜日ごとに原宿の路上で踊る「不良少女」です。

 当人もカミングアウトしているとおり、中学時代の小泉今日子は「不良」でした。週末はかならず原宿で過ごしていたといいます(注1)。そのころ住んでいたのも、「東京から小一時間で行かれる地方都市」厚木です。『十階のモスキート』のリエと、デビュー前の小泉今日子は、かなりの部分で境遇がかさなります。

 そのせいか、『十階のモスキート』における小泉今日子の存在感は強烈です。思春期を迎え、体に急速な変化が起こり、周囲が自分を見る目も違ってきた。そのことにどう対処していいかわからず苛立って、反抗的になるしかなくなっている――リエのそういう状態が、台詞なしでも伝わってくるのです。

 翌年、庄司陽子の人気コミックを原作にした映画『生徒諸君!』で、小泉今日子は主役をつとめます。病弱で天使のように清らかな心を持ったマールと、溌剌として仲間たちをリードするナッキー。対照的な双子姉妹を、一人二役で演じました。マールの「儚さ」と、ナッキーの明るい笑顔の底にひそむ「マールのようには両親から愛されない寂しさ」。それぞれのキャラクターの勘どころを、小泉今日子は的確につかまえています。

 興味ぶかいのは、マールとナッキーのどちらも、「肉体など持たないかのような透明さ」を感じさせる点です。自由にならない体を持てあましていた『十階のモスキート』のリエ役と、同じ女優が演じているとは思えませんでした。

 1986年には、映画『ボクの女に手を出すな』に出演しています。小泉今日子の役まわりは、大富豪の跡とり息子を誘拐する計画に巻きこまれた「貧乏な不良娘」黒田ひとみです。おなじ「不良」といっても、ひとみは『十階のモスキート』のリエと印象が違います。ひとみの背後には、「勢いがあってハイセンス」という「アイドルとしての小泉今日子」のイメージが透けて見えます。衣裳も、一見「不良風」でありながらカラフルで魅力的です。

 1988年公開の『快盗ルビイ』で、小泉今日子は初めて「映画の賞」を受賞しました。毎日映画コンクールとヨコハマ映画祭の主演女優賞に輝いたのです。


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