名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件(朝日新書)おおたとしまさ著定価:929円(税込み)Amazonで購入する
名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件(朝日新書)
おおたとしまさ著
定価:929円(税込み)
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「『名門校』というといわゆる進学校であり、ガリ勉が多く、受験に特化した教育が行われているイメージを持つ人がいるかもしれないが、それは誤解だ」

 育児・教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は自著『名門校とは何か?』(朝日新書)の冒頭でそう指摘する。

「開成にしても、灘にしても、筑駒にしても、校風は自由で、受験に特化した指導はほとんどしていない。生徒たちは部活や行事に熱心だし、教員たちはむしろ『ゆとり教育』を地でいくような授業を行っている。宿題は問題集よりもレポート中心。授業中はよく議論し、生徒が発表する機会も多い。『真のゆとり教育』と言える内容だ」(同書より)

 生徒たち全員に東大に行けと指導したら、250人だって合格させられる。しかしそんなことをして何の意味があるのか――本書の中で、そう語るのは30年以上、東大合格者数1位を独占している開成の柳沢幸雄校長だ。同じく東大合格者数で毎年上位に名を連ねる麻布の平秀明校長は常々、「最終学歴麻布でいいと思える教育をしている」と発言しているという。つまり東大合格者を多く輩出している名門ほど、「何が何でも東大」という教育方針ではないというのだ。

 しかしこれらの発言も「実績」を残しているからこそできるものだろう。また、今でこそ東大を目標にするのは教育ではないと豪語するこうした名門校も、かつては受験に傾倒した教育を行っていた時期もあった。しかし進学実績が伴うにつれ、そこに「ゆとり」も生まれる。それが名門校の校風を生んでいるのだと、おおた氏は指摘する。

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