「すでに実績が出ている学校はそこを強調しなくていいので、結果的に教養主義や人格教育を打ち出せる。より本質的な教育に力を入れられる。『大学受験なんて小さな目標ではなくて、もっと遠い将来の大きな夢を掲げろ』と生徒たちを鼓舞できる。生徒たちもその気になる。結果、『大きな夢を実現したいなら、目の前の大学受験なんて楽勝でクリアしなければ』という発想が、学校文化として無言のうちに浸透していくのだ」(同書より)

「名門校」にとって受験はただの通過点にすぎない。大学卒業後、就職後に世界に通用する人材を育てるのが多くの名門校に共通する考え方だ。目先のテストの点数ばかりにとらわれ、本来、伸ばせるはずの能力を伸ばすこともできず、多感な時期に自由な生き方を模索できない……そんな現代の子どもたちの境遇を変える必要があるのではないか。

 おおた氏は同書の最後でこう語る。

「名門校と呼ばれるほどいい学校の本質的な価値が、決して偏差値や進学実績によるものではないと、一人でも多くの人に知ってもらえれば、その風潮を少しでも改めれるのではないか。(中略)社会全体が、名門校のような空気で、子供たちを包み込んであげればいいのだ」