たとえば、机に向かうためには「儀式」を決める。勉強の前は「トイレにいく」というように、具体的な行動を決めて、勉強時間の前に必ずそれを実践する。パターン化された行動は人を次の行動に駆り立てやすいから、「トイレにいく→机に向かう」と体が覚え込むのだ。「そんな単純なことで……」と疑問に思うかもしれないが、その効果は絶大なのだ。

 苦手科目を勉強するときは、得意科目の勉強を5分だけする。このとき苦手科目の教材を開いて机に載せ、その上に得意科目の教材を広げる。5分ほど経って勉強に勢いがついてきたら得意科目の教材は横に放り出して、「そのまま」の体勢で苦手科目の教材にうつる。こうすれば苦手科目の勉強にスムーズに入れる。

 さらには問題の解き方。優等生のための勉強法なら、とにかくたくさんの種類の問題に当たれ!と指導するかもしれない。でも、落ちこぼれは、こんな方法は時間の無駄と言ってもいい。私も含め平凡な脳ミソでは、一度解いたり読んだりしただけではほとんど頭に入らないのだから。

 勉強が苦手なら知識にタッチする回数を増やすことが大切で、問題を解くときは、同じ問題に何度も取り組まなければいけない。

 さらに取り組むときも工夫が必要で、取り組む回数によって勉強の仕方を変える。同じ問題に3回トライするなら、1回目は解こうとするのではなく、問題と解答、そして解説を「読む」ことを心がける。解くのは2回目以降にする。こうすれば問題が解きやすくなり、「解けない→イヤになる」という負のスパイラルを回避できる。

 私が声を大にして言いたいのは、本人にふさわしい受験ノウハウがあれば、誰しも有名大に合格することができるということ。勉強する本人の状況や現状のレベルに照らして、最も合ったやり方で勉強をすべきなのだ。だから、子どもを見守る立場から、今の偏差値で志望校を決めないであげてほしい。この時期に、子どもが希望を持つことが、本当に人生を変えることになるのだから。

 勉強は本来楽しいもので、人生を好転させる力がある。「できる経験」を積ませることで、一人でも多くの受験生たちがこのことに気付いてくれたらと強く思う。(碓井孝介)