NHK連続テレビ小説「まれ」、第1週から平均視聴率20.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調だ。設定が現代のディープな地方の町で、女子高校生が夢を追う物語といえば「あまちゃん」。石川県人は「あまちゃん」以上の盛り上がりを期待しているが、能登弁を聞くのは初めてという視聴者も少なくない。出演者にとっても難易度は高そう。理解・習得のポイントを“能登弁ネイティブ”に聞いてみた。
石川県の方言は関西弁の影響を受けているが、県内の地域差は大きく、特に能登では町が変わると語尾が変わる。『都道府県別 全国方言辞典』(佐藤亮一編、三省堂)によると石川県の方言は、能登半島の付け根あたりから北の能登方言と南の加賀方言に大別され、能登は南側の口能登と北側の奥能登に分かれる。さらに奥能登は富山湾側の内浦と反対側の外浦で異なる。「まれ」の舞台となっている輪島市は外浦にあたる。
語尾の特徴としては、「や」「げん」「わいね」「け」などが挙げられる。それぞれ「だ」「です」「だよね」「か?」のニュアンスだ。『都道府県別 全国方言辞典』ではイントネーションに文節末で揺れる独特の「ゆすり音調」があるとしている。
「毎日、『まれ』見とるよ~。おもっしーね(面白いね)。方言もかなりのレベルや」と能登弁ネイティブからは好評を得ている。
「こうてって」
第7話・輪島の朝市の場面、土屋太鳳が演じるヒロインの津村希は客に呼びかける。「買ってください」という意味である。高齢者は「こうてくだぁー」という。能登方言は年齢に応じて異なるらしい。
「だらみたいやねー」
第9話で常盤貴子が演じる希の母親・津村藍子が、6年ぶりに能登へ帰ってきた夫に言ったセリフだ。「だら」は石川・富山両県で使われる北陸地方ならではの方言である。横浜市生まれで西宮市でも過ごした経験がある、常盤貴子なら、「バカじゃないの」や「アホちゃうか」の方がしっくり来るかもしれない。夫に愛想をつかした能登女の心情を端的に言い表した「だら」。イントネーションは完璧だった。「能登に来て7年経った分、能登弁が上達したんが、分かるわいね」と能登弁ネイティブは感心する。