希の同級生の父親を演じる塚地武雅や板尾創路は大阪府出身。関西弁のニュアンスを打ち消すべく苦心している様子が分かるという。篠井英介は金沢市出身であり、「さすがに雰囲気をつかんどる」との印象だ。

 希の祖父代わりとなる桶作元治を演じる田中泯と元治の妻・文役の田中裕子は別格とのこと。

「さすがにうまい。それにイントネーションなんて気にならんほど迫力、説得力がある」。

 能登には桶作夫婦のような元気で頑固な高齢者がいっぱいいるようだ。

 ところで「頑固」はドラマの中でもしばしば使われる能登の方言である。標準語とは別の意味があり、「量や数が多い」「並外れている」「すごい」「とても」というニュアンス。人に使う場合でも「へんくつもの」というよりは「豪快な人」「すごい人」「むちゃな人」に近い。

 能登弁ネイティブによると、「ゆすり音調と多用される鼻濁音をマスターできれば、能登弁はバッチリ!」とのこと。「ゆすり音調」とは、上がったり、上がって下がったりする独特の言い回し。「あのーおー」というところを「あの~お~」と言ったり、「やー」をニュアンスによって「や~」など音の上げ下げで使い分けたりする。ちなみに鼻濁音については「ガッツ(石松)さんが本当に上手」と手放しでたたえる。栃木県出身のガッツの能登弁、まったく違和感はないらしい。

 希が東京から能登に来たばかりのころは、独自の練習帳を作って能登弁を習得しようと努力する場面があった。能登弁ネイティブは「出演者の皆さんも相当、大変やろ~。苦労のほどが分かる、分かる」と推測する。「まれ」出演者の頑張りは、ちゃんと能登の人に伝わっているようだ。

(ライター・若林朋子)