なお、セクハラ問題は裁判になることも珍しくないが、被害者が喜んでいるかのような振る舞いをしたことによって、加害者側の主張を一部認め、被害者側の過失を指摘した判例もある。そのような事態に陥らないためには、携帯メールでのやり取りや社内での態度には注意を払う必要があり、会社側も実際にトラブルが起きてしまった場合には聞き取り調査などの対応を取り、セクハラか否かを慎重に判断する必要があると板倉氏は指摘する。

 また、同書では「ブラック企業」における賃金トラブルについても取り上げている。相談内容は以下の通りだ。

【やっと就職が決まったメーカーから受け取った雇用契約書をみてみたら、『給与20万円・1日10時間労働で残業代なし・厚生年金や健康保険の加入なし』。この会社、大丈夫――?そんな不安にかられたら、どうしたらいいのでしょう】(同書より)

 法的に残業代を払わない所定労働時間は、一部の仕事を除いて1日8時間、週40時間以内と定められている。また厚生年金や健康保険も、一人でも労働者を雇用している企業は加入が義務づけられている。チーム所属の弁護士・梅田和尊氏は、上記ケースの雇用契約書は「違法要素が満載」と断言する。

 同氏は、入社前に労働契約をきちんと確認し納得したうえで署名するのが一番良いと語る。だが、実際、労働者からすれば入社後に「ブラック企業」の実態に気づくことも少なくない。たとえば「仕事に失敗したら罰金500円を給料から引く」「有給休暇を取らせない」「定時にタイムカードを打たせた後に残業させる」等は、働いてみて初めて知る「違法行為」の一部。梅田氏は、こうした行為に直面した場合は、直ちに労働基準監督署などの関係機関に相談することが重要とも述べている。

 社会の一部として働いている以上、誰でも大小様々なトラブルに巻き込まれる可能性がある。日本社会の不条理を「これが日本だから……」と諦めるのか、それとも法に則して突っぱねるのか、あなたならどうしますか?