地方では、どこにいくにも自家用車が必要と思われがちだが、地下鉄・バスなど公共交通網が発達した同市では、マイカーがなくても意外と生活に困らない。特に市内中心部の天神・大名地域では、あえてクルマを持たない人も多い。

 松尾さんは逆にそこにビジネスチャンスを見出している。

「クルマを持たないということは、選べるというメリットがあるということ。『どこに行くか? 』という目的地選びと同じぐらい、『どうやって行くか? 』という手段選びも重要視されていいはず。クルマを持たない人も、もっといろいろな選択肢があっていいはずなんです」(松尾さん)

 その考えに基づき、さらにこれまでの経験を生かして誕生したのが、新サービス『Veecle!-experience(ビークル)』。

 乗り物の総合レンタルサービスだ。レンタル対象は、キャンピングカー、オープンカーなどのクルマはもちろん、バイク、自転車、船、それになんと馬まで。とはいえ、松尾さんはそれらバラエティに富んだ「乗り物」を保有しているわけではない。目をつけたのは「町のレンタカー屋さん」だ。

「レンタカーの世界って大手だけでなく、中小企業が多数存在するんですよ。保有台数は大手に匹敵するにも関わらず、稼働率は低い。そこで、それら中小企業をピックアップしてサイトに集積、代理店のような窓口機能を果たす業務アプリを作ることを始めています。今のところ、登録台数は福岡市内で400台ですが、来年6月までに1万台を達成する予定です。年300%成長が目標なので、2017年には取扱台数10万台を超える予定です。そうなると、ゆくゆくは国内最大の乗り物レンタルサービスになる。まずは国内のマーケットを押さえます。そして、世界最大の乗り物レンタルプラットホームを作っていくつもりです」(松尾さん)

 子供のころから、同名の偉人・坂本龍馬に憧れていたという松尾さん。福岡から日本全国へ、さらに世界へと、その目はずっと先を見据えている。彼のように大きな夢を抱き、福岡で起業する若者は年々、増えている。現在、福岡市が行っている創業支援策が、こうした若者の挑戦をどれほど後押しするのか、まだわからないが「創業特区」が名ばかりに終わらないことを願いたい。

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