2日後の手術の日、入院手続き後に仕事に出掛けたが、手術の直後、執刀医から携帯電話に連絡があり、手術が順調だったこと、翌日退院する手続きをするように指示を受けた。退院直後も、今後のダイエットフードを決める結石の分析があり、執刀医が結果を電話で説明。さらに、分析結果と今後の注意事項、ダイエットフードの銘柄が4種類書かれたレポートがファクスで送られてきた。

 大病院とあって、初診料、手術代、入院代、結石分析などで計2千ドル。クレジットカードが使えて助かったが、こうした高額の支払いを避けるため、ペット保険は急成長の業界だ。北米ペット健康保険協会(NAPHIA)によると、12年末に被保険者のペット数は100万を超え、年払い保険料は08年から13%増の4億5千万~5億ドルに上る。保険給付金は、大手ペットプランで犬・の場合、1万~2万2千ドルだ。

 実はAMCは、01年9月11日の米同時多発テロで崩壊した世界貿易センター跡で、生存者を探すために世界中から集まった約150頭の救助犬のケアでも、中心的役割を担った。診療車を連日近くに出し、現場から消防士とともに帰ってくる救助犬の体や鼻を洗浄、脱水症状を防ぐための静脈注射や診断、足の裏がやけどしないようにブーツを履かせるなどの無料サービスをAMCとボランティアが一体となって進めた。

「ペットがいると旅行に行けない」と思う日本人は多いが、米国人は長期休暇でも家にペットをおいていく人は多い。ドッグウオーカー、キャットシッターという職業が定着しているからだ。

 ジョアナ・シャピロ(48)は、現在フルタイムのキャットシッターだが、どんな動物の面倒も見られる。スペインから移民し、動物病院のアシスタントとして経験を積み、動物の「老後施設」であるアニマル・サンクチュアリで、馬や牛にいたるまで看護してきた。彼女のプロ意識はとても高く、猫の表情を読み、「もう帰ってもいい」と判断できるほど猫がリラックスするまで時間が許す限り共に過ごす。糖尿病の猫にインシュリン注射をし、薬を餌に混ぜたりもする。

 感謝祭やクリスマスなど休暇シーズンは、一日に10軒以上回り、休みは一日たりとも取らない。12年、大型ハリケーン「サンディ」がニューヨークを直撃し、地下鉄が運行を中止した際も、何時間も歩いて猫たちのいる家を回った。

「私の代わりができる、本当に信頼できる人は簡単には見つからないし、私が愛する猫たちを他人にまかせるなんてとてもできない」(シャピロ)

 困難なこともある。病気の猫や動物に出合うと、飼い主と同様に心配でたまらなくなる。

「ある病気の猫をおいて、飼い主が旅行に行くというので胸騒ぎがして、飼い主が出発した直後に行ってみたら、心臓発作を起こしていたの。飼い主と連絡をとりながら緊急病院に直行した。私のほかに猫が頼れる人は誰もいないから、私の判断にすべてがかかっているのよ」

 ペットケアに打ち込むようになったのは、動物は人間と同じという考えからだ。

「人間の社会は、お年寄りや子どもなど弱い人をかばい、尊敬してこそ平和になる。そうであれば弱い動物たちを尊敬するのも当然でしょう」

※アエラムック『動物病院 上手な選び方』から抜粋