ペットは言葉がしゃべれないからこそ、毎日きちんと観察することが大切だ
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ペット先進国であるアメリカでは、ドッグウオーカー、キャットシッターという職業が定着している
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「バスルームで歯を磨いていたら、トンティが入ってきて、ニャアと何かを訴えて、おしっこをしたら血が混じっていたの」

 通訳・翻訳家でミュージシャンのマリー・コクラン(49)は今年8月11日、雄トンティを動物緊急病院「ベテリナリー緊急・紹介グループ(VERG)」に連れていった。VERGは、ニューヨーク・ブルックリン区に2カ所あり、心臓、皮膚、腫瘍、眼科、レントゲンなどの専門医が常駐。トンティは、緊急措置が必要かどうかチェックを受け、尿結石の疑いはあったが、様子を見るため鎮痛剤などを受け取って帰宅した。

 しかし、2日経ち、「どうもまだおかしい」と感じたコクランは、再度VERGに行き、トンティは入院。翌日、尿管にカテーテルを入れて、排尿を助ける措置を受け、さらに2日間入院した。

 トンティが入院していた3日間、私はコクランとともにニューヨーク市外に出張していたが、担当医とアシスタントから5回も電話があり、経過が逐次知らされた。

「やはり結晶ができていました。カテーテルを入れて6時間経ちましたが、経過はとてもいいです。おしっこも問題なく出ています。退院は金曜日にはできます」

「土曜日までニューヨークにいないので、土曜日夕方に退院でもいいですか?」

「問題ありません。それまで預かりましょう」

 そばで電話のやり取りを聞き、なんと飼い主を思いやったきめ細かいサービスだろう、と思った。

「電話連絡は、本当に感動した。彼らが本当にトンティのことを気にかけてくれているのが伝わってきたし、飼い主にはとても重要なことよね」

 とコクラン。さらに、費用は225ドル。延泊代は取られなかった。

 トンティは退院後、カテーテルなしで自力で排尿。回復に向かっている。

 言葉をしゃべらないペットが異常を訴えた際、人間と同じように即座に行ける24時間オープンの「緊急病院」があるかどうかは、飼い主にとって重要なことだ。ニューヨークでは、近所の緊急病院を尋ねることができるホットラインやウェブサイトが複数ある。さらに、口コミサイト「イエルプ(yelp)」を使って、動物病院や緊急病院の評価の星の数や、ほかの飼い主のコメントで評判をチェックすることもできる。

 私自身が、飼い猫である雌のロザリーの血尿を発見した際は、アニマル・メディカル・センター(AMC)に行った。日本で世話になった獣医から、「世界一の動物病院で、そこで働きたい獣医が世界中から集まる」と聞いていたからだ。

 私が行ったのは10年も前だが、その時の衝撃は忘れられない。総合病院とあって建物は1ブロックの半分を占め、待合室も人間の病院並みの広さ。獣医100人、インターン約90人、患者数は年間4万に上る(2012年調べ)。犬猫だけでなく、鳥類・は虫類の治療、さらにフィットネスやペットロス・サポートにいたるまで、25種類の診療科とケアを揃えている。

 診察室では、若いインターン2人がカルテ作りをさっとすませ、その後担当医が登場。レントゲン撮影を指示し、すぐにその写真を見せて「膀胱結石」と診断。結石を取るため、インド出身の内臓手術専門医が執刀する手術の予約を担当医が電話ですませた。このスピーディーさにはびっくりした。

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