政府も企業も個人も、改革なくしては生き残れない時代です。2月にはSONYが「VAIO(バイオ)」ブランドで人気を博したパソコン事業を売却するなど、大手メーカーも改革に取り組み始めました。

 JALの早期黒字化など、改革の成功例が話題になりましたが、改革に失敗したり、なんだかんだと理由をつけて改革を先送りにすることもしばしばあります。どうしたら改革は成功するのか――。そうした問いに応えるべく、自著『組織がみるみる変わる 改革力』(朝日新書)で「レベル0、1、2の改革進化の法則」を提唱しているのは、マッキンゼー日本支社を再建し「改革請負人」と呼ばれる上山信一氏です。

 レベル0とは、現場の人々が仕事を少しずつ見直す「改善」のこと。レベル1は投資や人材登用の必要性といった営業の幹部や事業部長レベルの判断を要するもの。レベル2は事業のビジネスモデルや組織のあり方の抜本的見直しなど、高度な経営判断が必要となるものです。

 上山氏は、成功する改革はレベル0から始まり、レベル1、2へと進化するといいます。はじめにレベル0の改善運動がなければ、そもそもどこに投資や人材強化の必要があるのかといった現場情報を入手できず、投資や人員配置の決断をくだせません。その意味で、改革以前に日常の改善運動を始めることはきわめて重要だというのです。さらに、事業削減などをめぐって組織内で意見や利害の対立が起きたときにも、この順序で行えば、各自の成果を認めつつも数字で説得できるため、レベル2の改革がスムーズに行えるそうです。

 また、改革を実行する際には、何が課題なのか見極める必要性があります。ニュースでは企業のリストラ、人件費の見直しが取り沙汰されますが、データを分析すると意外な課題が見えてくるものです。経営の現場で言われる「改革」とは、これまでの戦略や組織、仕事を見直し、成功体験も否定すること。旧体制の組織では上層部に危機感がなく改革の必要性を認識していない場合もあります。このケースで上山氏が利用したのは、第三者でした。

 NHKや東京電力などは不祥事で第三者の目に触れ、改革を余儀なくされました。ただ健全な企業の場合、第三者が経営体制や組織内のことに口を出すことは多くありません。上山氏の場合は、外部から講師を招き、勉強会を通じて社内の声を集め、問題意識を共有させたそうです。

 どんな強固な組織でも、環境変化に対応できなければその集団は劣化していきます。いつ自分の会社が経営困難に陥るかは誰も予測できません。経営に携わっていない立場であっても、危機感を持ち「改革」の必要性を頭にいれておくことが、今を生きるサラリーマンには必要なのかもしれません。