1990年代末から出版不況がいわれる中、最近では老舗書店が相次いで店をたたんでいる。書店の廃業、閉店の波が街の小規模書店だけでなく、地域の中核書店にも押し寄せ、9月末には海事書などで有名だったミナト神戸の老舗「海文堂書店」が店を閉じた。

 消費者の本屋離れには、ネットの流通、更に欲しい本が早ければ当日中に入手できるアマゾンジャパンや楽天など、ネット書店への顧客流出がその背景にあるようだ。
 
ニュース番組の解説や新聞のコラムなどで活躍するジャーナリストの池上彰氏は、著書『池上彰のニュースの学校』で、本を読むことの大切さについてこう話す。

「ネットで検索するとさまざまな情報に触れることができますが、それはあくまで、事実の端っこや表面に過ぎません。だから、ネットで得た情報をとっかかりにして、そこからさらに調べていく必要があるのです。そこまでして初めて、意味のある情報に接することができる」

 また、池上氏はネット書店ではなく、リアル書店を勧めている。その理由について、ネット書店の検索では欲しい本にたどり着かないことが多い、とした上で、「たとえば、行動経済学について調べたいとして、『行動経済学』とネット書店で検索しても、書籍タイトルに『行動経済学』という言葉が入っていれば、もちろん引っかかりますが、まったく関係のないタイトルだと引っかからないことがあります。『「生き方」の値段』という本は、“なぜあなたは合理的な選択ができないのか”ということをテーマにした本なので、まさに行動経済学の本ですが、検索上位に上がってこなかったりします。すると、リアル書店のほうが探しやすいということになります」と語っている。
 
 「実際はネットで検索して、『なんとなくこれらの本があったら買おう』といったくらいのアタリをつけておいて、リアル書店に行き、そこであらためて棚を見て買う本を決めるのが、もっとも効率的ではないでしょうか」と池上氏。

 ネット社会の今、手軽さが求められる時代であることは間違いない。しかし、リアル書店側もネット書店とは違った魅力や良さ、活用法を外に向けて発信していかなければ、消費者は離れていく一方なのかもしれない。