「にわか韓国ファンは買わない」
意外な韓流グッズとは?


 その商品とは、輸入食品などを扱う「カルディコーヒーファーム」が今年2月に数量限定で発売した「韓国レトロ皿セット」(税込み1300円)。

カルディの「韓国レトロ皿セット」(=ニュースリリースより)
カルディの「韓国レトロ皿セット」(=ニュースリリースより)

 緑を基調にした古風なデザインのお皿で、現地の食堂などで使われている食器(メラミン皿)を再現したもの。プルコギのたれもセットで付いてくるようです。

 日本に例えるならば、昔ながらの大衆食堂や、おばあちゃんの家にあるような「昭和の食器」といったところでしょうか。その韓国版に日本のZ世代が飛びつき、すでにオンラインストアでは「取り扱いなし」となっています。

 筆者が話を聞いた若者も、「お皿が欲しくてカルディの店舗に行ったけれど、売り切れていて買えなかった」と残念そうに語っていました。


 コスメや洋服といったスタイリッシュな韓流グッズだけではなく、「古風なお皿」までもが日本のZ世代にウケる理由は何なのでしょうか。

 さまざまな若者に話を聞く中で、筆者はその一因は「他者との差別化」だという結論に行き着きました。

 本連載の前回記事『日本のZ世代で「なんちゃってヴィーガン」流行の意外なワケ、焼肉も代替肉も愛好』でも解説しましたが、どうやら日本の若者たちは今、「この人は“通”なんだな」と周囲に認識されたいようなのです。

 K-POPアーティストの楽曲を聞いたり、韓国風カフェを巡ったり、韓国の化粧品を使ったりする人は、あくまで「にわか韓国ファン」。それに対して自分は、目先の流行だけを追うのではなく、韓国の食文化さえも愛する「ガチ韓国ファン」である、と――。

 もちろん、そう周囲に公言するのではなく、SNSにお皿の写真を投稿することで、「ガチ勢」であることをやんわり匂わせるわけです。

 このような消費行動が生まれるのは、日本の韓流ブームが本物になってきた証拠です。ファンが少ないジャンルであれば「にわかvsガチ勢」の論争は生まれません。

 サッカーやラグビーのワールドカップや野球のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が開かれると、大会期間中だけ日本代表を応援するライト層は「にわか」だとたたかれます。一方、マイナースポーツではこうした現象は起こりません。

 韓流ブームにおける構図も、おそらくスポーツと同じです。韓流ファンの裾野が広がったからこそ、周囲と差別化するために、「ガチ勢」の若者はお皿を買いにカルディへと駆け込んだのです。

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日本のZ世代が「嫌韓感情」を持たない理由