不景気になると、高まる外国人排斥の動き

 さて、そこで想像をしていただきたい。もし福岡の寿司店の調理場に、愛国心あふれる人が働いていたら、この状況を我慢できるだろうか。

 韓国や朝鮮半島への怒りで頭がいっぱいのところ、自分の職場に韓国人が大挙として押し寄せて、行列をつくって寿司を食べていくのだ。特に年末年始はすさまじい数の韓国人がやってきて、忙しくて目が回りそうなほどだ。

 「日本に迷惑をかけているくせに、楽しそうに寿司を食いやがって、もう二度と日本に来たいなんて思わないように、ちょっと痛い目に合わせてやるか」

 そんな“悪魔のささやき”になびいてしまうこともあるのではないか。もちろん、これはあくまで筆者の想像にすぎない。ただ、ベトナム人技能実習生への相次ぐ暴行やパワハラや、ウクライナ問題で日本にいるロシア人への陰湿な嫌がらせなどを考えると、「韓国人に嫌がらせする人もいそうだな」と思ってしまうのも正直なところだ。

 貧すれば鈍するではないが、景気が悪くなったりすると、外国人排斥の動きが高まるのは、どの国にも見られる傾向だ。

 今、日本は物価が上がるが、賃金は上がらずということで、平均給与はついに韓国にも抜かれた。豊かさを示す1人当たりGDPが抜かれるのも時間の問題だ。こういう厳しい現実を受け入れられない日本人も多い。「嫌韓」が盛り上がる土壌は既にできあがっている。

 日本はコロナ禍の3年でさらに「内向き」になったという外国人からの指摘も多い。「わさびテロ」の真相はわからないが、こういう問題が注目を集めたことを機にあらためて、我々が韓国人や外国人観光客に対してどう向き合うべきなのかということを考えてみてもいいのではないか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)