「自分の都合」ではなく「相手の都合」を理由にする

 ただ、相手が話好きなお客さまであればあるほど、困った事態に遭遇しやすくなります。そう、会話が弾みすぎるあまり、予定の面会時間を大幅にオーバーしやすくなってしまうのです。

 もちろん、時間に余裕さえあれば、お客さまの話にとことん付き合うのがベストですが、次のアポイントがある場合には、どこかで区切りをつける必要があります。とはいえ、せっかくお客さまが気持ちよく話してくださっているのですから、こちらか切り上げるのはなかなか難しいものです。

 そんなとき僕は、「○○さん、お時間大丈夫ですか?」と切り出していました。「自分の都合」を気にするのではなく、「相手の都合」を気にする姿勢を見せることで、お客さまに不快感をもたせることなく、うまく話を切り上げようとするわけです。

 ここで、察しのよいお客さまは、「あ、話し過ぎたかな……。そろそろ切り上げなきゃ」と思ってくださるのですが、なかには、「私は、大丈夫です」と、さらにお話をしようとされる方もいらっしゃいます(ありがたいことなのですが……)。

 しかしこちらは、次のお客さまに会う時間が迫っている……。そのときはもう、最終手段。僕は、「申し訳ありません。次の予定のためにもう出なければいけない時間となってしまいました」と、正直に告げるようにしていました。

 ここで大切なのは、本当のことを伝えること。「実は、◯時◯分にお客さまとのアポイントがあるのです。もっとお話を伺いたいのですが、次のお客さまにご迷惑をおかけするわけにもいきません」などと嘘偽りなくお伝えして、ご理解をいただくのです。

 そのうえで、楽しいお話を聞かせてくださったことに対する感謝の気持ちを伝えるとともに、「お話の続きは次回、ぜひ聞かせてください」と明言します。これをしっかり伝えないと、お客さまがデリケートな方の場合は、「もしかしたら、自分の話がつまらなかったからもう帰りたくなったのかな」などと不快に思われるかもしれません。

 しかも、「次回、ぜひ聞かせてください」と伝えることで、「次回アポイント」をいただくこともできます。それは、営業マンにとっても、とてもありがたいことなのです。このように、上手な「話の切り上げ方」を身につけておけば、安心して、お客さまに思う存分話していただく気持ちの余裕をもつことができます。そして、お客さまの心を掴むことができるようになるのです。