日本人の深刻な「牛乳離れ」は「数字」が引き起こしている

 この手の「離れ」系の話を聞くと、40代以降のおじさんたちは、「最近の子どもは牛乳を飲まない、俺が小さい時は給食で2、3本は当たり前だった」とか、「やっぱり子どもは部活でヘトヘトになって牛乳をガブガブ飲むくらいじゃないと」みたいなノスタルジックな思い出話とともに、今の子どもや若い世代の志向やカルチャーを問題視しがちだ。

 しかし、「牛乳離れ」とは、根性や精神論で解決できるものではなく、人口減少やそれにともなう経済の低迷と同じく「数字」が引き起こしている問題だ。

 日本の牛乳消費量は、日本の人口が右肩上がりで増えていた1990年代までは増加の一途をたどっていた。子どももまだそれなりにいたので、給食でもたくさん飲まれた。

 独立行政法人農畜産業振興機構によれば、牛乳の消費は1966年の201万キロリットルから1996年には505万キロリットルと30年間で約2.5倍に増加している。人口増と日本経済の成長とそのままリンクしているのだ。

 しかし、1990年代後半から「失われた30年」に突入したように、96年をピークに牛乳の消費もじわじわと落ち込んでいく。

 農畜産業振興機構によれば、2013年にはピーク時に比べ3割減少の350万キロリットルと、17年間で150万キロリットル減少。その後も350万台を推移している。

 日本では毎年、鳥取県1つ分に相当する人口が消えて、子どもも減っている。にもかかわらず、飲料市場は多様化が進み、最近ではオーツミルクなど穀物系のミルクも普通にスーパーに並んでいる。これらの「数字」の変化を踏まえれば、「牛乳離れ」が進行するのも無理はない。

 では、こういう厳しい現実がある中で、どうすれば日本の酪農を守っていけるのか。それはつまり、生乳の生産量を減少させることなく、廃棄も減らすことができるのか、ということだ。

 筆者は「牛乳以外」に活路を見出していくしかないと考えている。

次のページ
「余ってるならバターを作ればいい」は 暴論