台風や大雨のときは、どのように部屋の安全を確保すればよいだろうか。

「強風に飛ばされたスリッパは、窓ガラスを割るほどの威力があるという実験結果が出ています。台風の上陸が予想されている時点でベランダスリッパや植木鉢など、風に飛ばされそうなものは室内に移動しましょう。シャッターがある家庭は、早めに閉めておくと安心です」

 また、多くの人の盲点になっているのが「ベランダの排水口」だという。

「台風が来る秋は、落ち葉が排水口に詰まりやすい時期です。集中豪雨や台風が来たときに排水ができず、ベランダに水があふれて室内まで浸水する可能性があります。普段からベランダの排水口掃除を心がけるのはもちろん、台風や大雨の予報が出たら落ち葉をすべて取り除きましょう」

■在宅避難で重要な3つの事前準備

 このように、土地、家、部屋の安全が確認できてはじめて、在宅避難が可能になる。在宅避難の事前準備では「食料と水の備蓄」「トイレ」「エネルギーの確保」が肝になるという。

「備蓄食料は、乾物やレトルトなどの常温保存食をストックしておくと安心です。おすすめは『ローリングストック法』。災害専用でなく、日常の保存食を賞味期限が近いものから消費して、常に一定量備蓄できるよう補充しておく方法です」

「トイレ」は、簡易トイレの常備や、常時風呂の水をためておくこと。いざ被災したときに排泄物を流す水に使えるなど、メリットが多い。

「最後の『エネルギーの確保』は、太陽光発電と家庭用蓄電池を活用する方法です。日中に太陽光で発電した電気を蓄電して夜に使うサイクルを繰り返せば、停電が長期化しても在宅避難が可能になります。最近では、防災や自家消費目的として太陽光発電を導入する人が増えてきています」

 年々、災害の規模が拡大している今、「住宅のトレンドにも変化が起きている」と、松本氏は話す。

「以前は、大規模な災害はめったに起こらなかったので、住宅は『災害時に命を守ること』を目的に作られていました。しかし最近は、『災害後も暮らせる・復旧できる家』が求められるようになっています。とはいえ、気軽に家を建て替えることはできないので、ハザードマップの確認や家具を固定するなど、一人ひとりが防災意識を高めるだけでも被災のリスクは低くなると思います」

 深刻さを増す自然災害も、備えあれば憂いなしだ。

(文/清談社・真島加代)