●過剰繁殖で遺伝子疾患や奇形の動物が生まれやすい理由

 ブリーダーにとってはペットショップに買いたたかれるため、動物を量産せざるを得ないという事情もあるのかもしれない。さらに、最も問題視すべきは、一部のブリーダーが、専門性の知識が乏しいために問題のある繁殖をしてしまっているという事実だ。

「たとえば折れ耳のスコティッシュ・フォールドはかわいいと人気ですが、あの折れ耳は軟骨の形成異常(骨軟骨異形成症)によって生まれたものです。特に折れ耳同士の繁殖で産まれた子は、『骨瘤』という関節の病気が重症化しやすいため、絶対にしてはならない繁殖です。

 犬の場合でも、ペットショップなどで販売されているレトリーバー系の子犬の多くは、股関節の形成異常(股関節形成不全)があるといわれています。それを防ぐためには親犬の股関節のレントゲンを撮り、専門機関で見てもらい、問題のない犬同士の繁殖をする必要があります。本来、繁殖は注意深く行う必要がありますが、日本では専門性に乏しいブリーダーが多く、過剰繁殖や間違った繁殖を繰り返しています。当然、不幸な子犬や子猫がたくさん生まれてくることになります」

 例えるならこれは、薬学の知識を持たない薬剤師がでたらめに薬を配合しているようなもの。その結果、商品に“なれなかった”子犬や子猫たちが量産されては闇処分されてしまうのだ。

 問題の根底には、ブリーダーになるハードルの低さも関係している。

「ブリーダーは、一昔前なら自己申告さえすればできる仕事でした。現在は必ず事業所ごとに動物取扱責任者(ブリーダーと兼ねている場合が多い)を置かなければならないのですが、その者はいくつかの要件をクリアする必要があります。そのひとつは、現場で半年間以上の実務経験が必要なのですが、実際には半年の勤務期間で月に1~2日の出勤でも要件がクリアできたと聞いたことがあります。

 また、2カ月ぐらいの通信教育を受けて、認定資格を取得すれば簡単になれてしまいます。『命』を扱う職業である以上、しっかりとした知識と技術を兼ね備え、学ぶ中でその責任を心に刻まなくてはいけません。本来ならブリーダーを国家資格にすべきだと思います」

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海外から見た日本は「動物愛護の三流国」