さらに、家族にがんじがらめにされるタレントも少なくない。

 韓国は血のつながりを日本以上に重視する。だから、成功者が出ると、果実を得ようと成功者に家族や親族が集まってきて、多くの者の面倒を見なければならなくなることが多い。貧しい家庭の出身であるほどその傾向が強くなる。

 今の日本では「アイドルタレントが家族を養う」といったことはまれだろうが、韓国では珍しいことではない。だから、タレント活動をやめたいと思ってもやめさせてもらえず耐え続けるしかなくなる。これもタレントを自殺まで追い込む要因になりうるだろう。

 ただし、そんな韓国でもタレントが自由に悪口を言える領域がある。それが反日だ。反日はむしろ韓国では倫理である。反対にタレントが親日的な言動をしようものなら、集中攻撃されて多くは謝罪に追い込まれてしまう。韓国人タレントがSNSに画像を上げるときは、親日的なものがないか絶えず神経をとがらせている。

 以前、人気K-POP男性アイドルグループ「BTS」(防弾少年団)のメンバーが原爆Tシャツを着て日本でバッシングにあったことがある。彼らには不良のイメージもあって若者を中心に人気があるが、日本を侮辱することは韓国で安心して「悪」を演じるための「優良コンテンツ」なのである。

 反対に日本で活躍したペ・ヨンジュンやKARAのメンバーには厳しい目が向けられ続けた。

 日韓の違いは、結局はその国の文化や社会事情の違いに行き着く。それは「アイドル」のあり方も同様である。韓国人アイドルの自殺は、韓国エンターテインメントの厳しさを表したものだといえるだろう。そして、その厳しさが、韓国の高いエンターテインメント性を作り出しているのもまた確かなのだ。

(国際政治評論家・翻訳家 白川司)