※写真はイメージです(GettyImages)
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「浮いて待て」教室では、服と靴を身につけたまま背浮きの練習をする(写真提供:一般社団法人水難学会)
「浮いて待て」教室では、服と靴を身につけたまま背浮きの練習をする(写真提供:一般社団法人水難学会)
浮力体(カバンやペットボトルなど)は、おへその上~腰あたりで支えると安定する(写真提供:一般社団法人水難学会)
浮力体(カバンやペットボトルなど)は、おへその上~腰あたりで支えると安定する(写真提供:一般社団法人水難学会)
「浮いて待て」教室の様子(写真提供:一般社団法人水難学会)
「浮いて待て」教室の様子(写真提供:一般社団法人水難学会)

 全国的にも夏休みに入るこの時季は、海に限らず、河川、湖沼、水泳プールなどで起こる「水の事故」に注意したい。ただ、いくら防止に努めても、事故が起きる時は起きる。万が一水に落ちた際に、自分自身や子どもが助かる確率を少しでもあげるために何ができるのだろう。一般社団法人水難学会の斎藤秀俊会長・長岡技術科学大学大学院教授にお話をうかがった。(医学ライター 井手ゆきえ)

●「服を着ていると、溺れやすい」というのは本当か?

 さて、本題に入る前に質問です。次の項目に○か×で答えてください。

 1.服を着ていると、溺れやすい
 2.溺れそうになったら、大声で助けを呼ぶと良い
 3.溺れた時は救助者がつかみやすいように、腕を上にまっすぐ上げると良い
 4.溺れている人を見つけたら、複数の大人が水に飛び込んで助け上げること
 5.水に落ちたら体をまっすぐ伸ばし、「背浮き」をして助けを待つこと

 答え:5。以外は全て×です。

●中学生以下の子どもの生還率は9割弱 背景に「浮いて待て」の浸透

 警視庁生活安全局地域課発表の「平成30年における水難の概況」によると、2018年に発生した全国の水難(事故・事故疑い含む)は、発生件数が1356件(前年比 +15件)、水難者1529人(同 −85人)、このうち死者・行方不明者は692人(同 +13人)だった。

 また、中学生以下の子どもの水難に限った場合、発生件数は133件(同 −11件)、水難者193人(同 −13人)、そして死者・行方不明者は22人(同 −4人)で、統計が残る1966年以降、最小人数を記録した。

「現在、中学生以下の子どもの水難事故からの生還率は88%です。われわれが『浮いて待て』の訓練プログラムを提供し始めた1999年ごろの生還率は、とてもお話になりませんでした」と斎藤会長は振り返る。

「しかし、小学校での『浮いて待て』教室が浸透した結果、万が一、水に落ちてもぷかぷか浮きながら救助を待てる子どもが増え、高い生還率につながったと思います。一方、高校生またはこれに相当する年齢の青少年と高校卒業以上の成人の生還率は、ようやく5割を超えたところです。子どもたちよりもかなり低い。むしろ、水に落ちた子どもを助けようとして、飛び込んだ大人が死亡する例が後を絶ちません」

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「浮いて待て」とは?