※写真はイメージです GettyImages
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【図1】
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【図5】
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 リニア中央新幹線の品川駅と名古屋駅の建設における鹿島と大成建設の独占禁止法違反を問う裁判が始まった。無罪を主張する2社に対して、同じ入札に参加した大林組と清水建設はすでに違反を認め罰金刑が確定している。ゼネコン国内トップ4社で認識が分かれ、対立を深めている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 松野友美)

 さかのぼること4年、2014年のクリスマス当日。清水建設本社11階では、社員が万歳をして「大きなプレゼントをもらった!」とはしゃいでいた。

 この日、JR東海がリニア中央新幹線の品川駅新設工事の競争入札実施を候補企業に通知しており、大林組、鹿島、大成建設と共に清水にも声が掛かったのだ。

 品川駅工事の募集が1工区だった場合、技術者を必要なだけ集められるのは大手ゼネコンの中でも規模が大きい大林、鹿島、大成の3社だけ。清水は区間分割で募集範囲が小さくならないと物理的に参加できない状況だった。

 清水は東海に必死の営業をした。そして南北2区間に分けて募集されることが決まったのである。

 リニア品川駅および名古屋駅は、営業中の東海道新幹線駅の地下に新駅を造るため、特に工事が難しい。だからこそ“歴史に残る仕事”としてゼネコンの垂ぜんの的だった。

 品川駅工事は当初、東海道新幹線の品川駅新設工事の実績がある大林が受注するとみられていた。実際、東海は入札を呼び掛ける前から、大林に周辺の地形や工事に必要な技術の調査などを依頼し、大林は約10億円もの費用を自己負担し“勉強”していた。

 発注者が入札前にこうした依頼をするのは民間工事ではよくあること。ゼネコンは受注を見込んでこれに応じるのが常だ。

 その場合、依頼したゼネコンへの発注を前提とするのが慣例だが、品川駅は大林を含む大手4社を指名する競争入札となった。

 ゼネコン側は、東海が4社を指名した理由は二つあるとみている。株主やマスコミから批判されないよう業者選定の公平性を保つことと、大林からさらなる値下げを引き出すことだ。

 入札候補に指名された各社は、品川駅工事の本命である大林の“当て馬”だと分かっていても、「発注者との関係があるので、辞退は難しかった」(ゼネコン幹部)。

 かといって情報不足のまま適当な見積もりで入札するわけにもいかない。大赤字の受注になったり、入札額が他社よりも大幅に高いと、東海から「やる気がない」とみられかねないからだ。

「入札のために情報収集するのは当然のこと」とゼネコン業界関係者は理解を示すが、これは「談合」の罪が問われるグレーゾーンである。

 品川駅入札において準備不足だった3社は、大林から情報をもらう必要があり、そろってこのグレーゾーンに足を踏み入れた。

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品川駅は4社の思惑通り…