結局、品川駅は4社の思惑通り北工区を清水JV(共同企業体)、より大きな南工区を大林JVが獲得。鹿島と大成は後に他の工区を受注しており、持ちつ持たれつの関係だったことは想像に難くない。

 17年12月、東京地検特捜部と公正取引委員会は4社が品川駅と名古屋駅の見積額や入札価格を教え合っていた(談合)として、独占禁止法違反の容疑で捜査し、翌年3月、法人としての4社と、鹿島と大成の幹部2人を起訴した。

 大林と清水は、課徴金減免(リーニエンシー)制度を使って罪を自主申告したため、18年12月にそれぞれ罰金2億円、1億8000万円の有罪判決が確定した。鹿島と大成は無罪を主張し、東京地方裁判所で先月14日に独禁法違反を問う裁判が始まった。

 なぜ4社は2対2で有罪の告白と無罪の主張に割れたのか。

 先に2社が自主申告したのは、罰金の減額と企業イメージを優先する経営判断によるところが大きかろう。ただ、大林にはさらに深い事情がありそうだ。「大林は直接関与した代表取締役の逮捕を避けたかったのではないか」とゼネコンの幹部は指摘する。

 各社の個別売上高で、民間土木の扱いは建設事業全体の7~11%と割合が小さく、売り上げへの影響は少ない。首都圏などで建設需要が好調な今は、民間土木の営業ができなくても他で稼げる。

 それでも代表取が逮捕されると営業停止期間が通常半年のところが1年になるなど、営業面に悪影響を及ぼす。これを避けるためにも早く片を付けたかったのだろう。

●JR東海のむちゃぶりも誘因

 4社の姿勢が割れたのには、JR東海のやり口にも原因がある。

 裁判では「入札時の競争制限の有無」と「受注予定者を決めることを2社が合意していたか」の2点が争われる。鹿島と大成がいずれも「ない」と主張するのは、東海が入札前から受注者を決めていたとみているからだ。

 例えば、東海が4社に与えた品川駅の見積提出までの期間はわずか3カ月。本来なら1年は必要となる工事規模にもかかわらずだ。

 また、東海の「コスト重視」の姿勢はゼネコンを追い詰めた。

 裁判で証言された例を挙げよう。工事に使うコンクリートには実勢価格(発注者ごとに決まる)と、より安い生コンクリート協同組合の標準価格があり、東海の工事には前者が適用される。しかし、東海は大林に後者で見積もるよう指示し、コストダウンを図ろうとした。

 東海のコスト削減などへのむちゃぶりは有名だ。入札の指名を受けなかったゼネコンの中には「東海の工事は、生コンを買えば買うほど赤字になるので、受注を避けている」とこぼす者もいる。

 4社は厳しい要求や27年の開業に間に合わせなければならないプレッシャーがあり、工区を分け合えるよう調整したとも受け取れる。

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裁判で証言した大林の幹部は…