ピクセル3の価格は9万5000円から、画面サイズの大きなピクセル3XLは11万9000円から(共に税込み)と、高級路線で強気の値付けだ。

 ある競合の通信大手の担当者は、「販売台数が見込めるかというと、そこは厳しい。ビジネスの利益だけを考えれば、auの採用見送りは理解できなくもない」と指摘。その上で、「ハード単体の性能は目立たないが、グーグルの最新サービスを真っ先に体験できる。ユーザーにとってベストな端末をそろえることは、ユーザーの利益につながる」と採用の理由を語る。

 auは今後の取り扱いについて、「顧客の声や市場動向を見ながら検討したい」と説明する。

 通信業界では、端末採用は新機種登場のタイミングが一般的だ。ピクセル3の後継機の計画は不明だが、慣例に従えば“グーグルファン”のauユーザーは1年近く待たされる可能性が高い。仮にヒットした場合、auの出遅れイメージは拭い難いものとなる。

 昨秋のAIスピーカー投入など、グーグルは勝負時とみれば大量に広告を投じてくる。今回もJR山手線に広告貸し切り車両を走らせるなど、ピクセル3のアピールに懸命で、前出の担当者は、「高額化したiPhoneとの比較など話題も多く、盛り上がりは想像以上だ」と語る。

 もともとauは、昨年5月に音声アシスタントの分野での提携を発表するなど、グーグルとの蜜月関係をアピールしてきた。

 慎重過ぎて奇妙にも映る今回のグーグル最新スマホの採用見送りは、かつてiPhone採用で出遅れて独り負けに陥ったドコモの二の舞いになりかねないリスクをはらんでいる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)