彼も雇用延長を申請したものの、週3日の短時間勤務を選びました。「なぜだろう?」と思いましたが、その理由はすぐにわかりました。彼は二足の草鞋を履くことを決めたからです。彼にはいろいろな趣味があるのですが、とりわけ2つの領域に心血を注いでいました。

 1つはビール缶コレクションです。日本各地はもとより、世界各国のビール缶を収集しています。年代別、ブランド別、記念缶や果てはエラーラベルものなどなど……海外はもちろん、ご当地ビール缶や様々な記念缶を求めて日本中を旅しています。

私もずいぶんと協力しました。当時海外出張が多く、しかもニューヨークやロンドンという大都市だけでなく、中米コスタリカであるとか、当時はまだ壁の向こうであった共産圏の東ヨーロッパの国々まで、様々な目的で足を運びました。その度に、目についたビール缶を購入してきました。

 彼はその趣味が高じて、ビール缶のコレクションルームのためにマンションを一部屋借りて、いろいろと工夫して陳列をしています。ビール缶コレクターは彼のほかにももちろんいますが、彼のところにしかない缶もあるようです。ビールメーカーなどから写真を撮らせてほしいという依頼もよく舞い込んでくるようです。

 彼は近いうちに、この趣味でまた1冊の本を書きたいと準備を進めています。本業関連で作った出版社との関係が、ここでものをいうわけです。

●どんな趣味も、真剣に努力して時間を費やすから面白い

 彼はまた、選挙マニアでもあります。どういうマニアかというと、主に国政選挙で、全候補者の経歴などを調べ上げ、データを集め、分析をして、当落予想をするのです。支持政党があるわけではなく、純粋に“選挙”というイベントを楽しんでいるのです。少なくとも私にはそう見えます。

 選挙がある度に、調べ上げたデータを壁一面に張り出し、友人を招いて予想を披露して、酒を飲みながら選挙速報に興じ、当たった、外れたと大騒ぎです。

 本論からは外れますが、昔は私も選挙速報を見るのが好きでした。徐々に大勢が決まってきて、時々感動のドラマを挟みながら、選挙区ごとの結果が出るからです。しかし、今は、なんと開票率0%でも当選確実が出てしまう。出口調査などで大体その予想は当たるのですが、テレビ局は選挙速報という番組を自らつまらなくしているように思います。

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老後の過ごし方に勝ち負けはない