それはともかく私も昔、何回か彼のパーティに招かれました。A選挙研究所と名付けられたそのイベントには固定ファンもいて、「選挙ってこんなに楽しかったのか」と口々に言いあったものです。

 実に面白い趣味だと思いました。シーズン、シーズンで必ずあるイベントを楽しむわけです。ただ、テレビの前で飲んで意見を言い合っているわけではありません。そのためにかなり苦労をして事前に情報を集め、分析する。なんと彼は、当選のバラの花まで自作していたのです。

●レアな趣味なら、太平洋でのマンボウの遭遇を味わえる

 ビール缶にしても選挙にしても、何事にも同好の士はいます。ただし、切手やコインといったメジャーな領域ではないので、その遭遇はかなりレアだと思います。私はその状況を、「太平洋で、2匹のマンボウが出合う確率」と言っています。今はSNSの時代ですから、そうした仲間の情報を知ることは意外とたやすいかもしれませんが、実際に出合う機会はそうそうないはずです。

 しかし、一度出合うと、お互いが打ち解けるのは早いでしょう。会話も弾みます。間違いなく仲良くなります。

 私は彼とずっと仕事が一緒で、温泉にも行っていましたから、一番の親友だろうと思っていました。いや、その信頼が裏切られたわけではありませんが、自分の知らない彼の世界の存在を知り、その一つひとつの世界で大親友がいる事実に驚きました。彼には深いつながりのコミュニティが複数あるのです。

 もとより老後の過ごし方に勝ち負けなどありません。しかし、老後の幸福度で言うと、彼の幸福度は私よりも間違いなく高いだろうなと思ってしまいます。しかも、どの趣味も、根気や行動力は必要ですが、それほどお金はかからないのです。

 彼は選挙パーティーの当日、「忙しい、忙しい」を連発しながら、せっせと手製のバラを壁に貼っていきます。実に楽しそうです。たぶん他の趣味でも、「忙しい、忙しい」と言いながら楽しんでいることでしょう。

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