●すでに地銀は採用難

「銀行は、必ずしもいい就職先ではない」という認識は、すでに学生の間に広がり始めているようだ。

 金融業界の専門誌である「週刊金融財政事情」(12月11日号)によると、地銀が新卒者の採用に苦しみ始めているという。大手地銀でも、内定を出した学生から辞退されるケースが増えており、どの時点でカウントするのかによって流動的だが、大手地銀でも2割、場合によっては最終的に200名弱に内定を出したものの「選考中の面接辞退や内定辞退が100名にものぼった」という東日本の地銀もあった。

 また、特にUターン就職者の採用に苦戦しており、地元の地銀が別の志望企業を受ける前の面接の"練習台"にされる傾向が強まっているという。

 記事で紹介された「就職活動を行っている学生から見て、地銀が県内の一番手企業というブランドはもう剥落している」との大手地銀人事担当幹部の認識は正しいようだ。

 ところで、同じ号の「週刊金融財政事情」には、格付会社のS&Pグローバル・レーティングは、11月29日に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の長期発行体格付けを「A-(シングル・エー・マイナス)」に格下げしたとのニュースが載っていた。2005年10月のグループ誕生以来、初めての格下げだという。

「A-」は、まだ機関投資家の投資対象にはなるが、保守的な投資ルールを持つ資金運用主体は購入を避けようかというくらいの格付けであり、国内最大のメガバンクグループが、この評価では苦しい。MUFGは株価を見ても、PBR(株価純資産倍率)が0.69倍(連結・実績)と低評価であり、投資家は同グループの成長性を全く評価していないと言っていいだろう。

 もっとも、当面の成長性は乏しくとも、それなりの収益を毎年稼いでいるので、メガバンクの株式は「バリュー株」として投資対象になり得る可能性がある、ということは、一言申し添えておこう。ただし、就職する新卒者にとっては、夢のない話ではある。

 メガバンク3行は、みずほフィナンシャルグループを筆頭に、大規模な中期的人員削減計画を発表して話題になったが、こうした発表が行われるということは、経営企画レベルでは、中長期以前に現時点で人員が余っているとの認識なのだろう。今後、追加的な人員削減計画が発表される可能性が十分あるし、こうしたリストラクチャリングの圧力が掛かる職場の志気は上がらない。

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もともと就職先としては勧めにくかった