率直に言って、ビジネスの条件を考えると、わが国の地方銀行は数が大幅に多すぎるし、メガバンクも3行は過多で、2行で十分かもしれない。経営統合して生き残ると、預金者にはいいが、統合された側の銀行の銀行員の人生はすっかり予定が狂うことになる。率直に言って惨めだ。

 また、銀行そのものがなくなるのではないとしても、支店の店舗が減ることは確実で、それは支店長ポストの減少を意味する。「いつかは支店長に」という過去の標準的な銀行員の人生目標が大きく遠のくことになる。

●もともと就職先としては勧めにくかった

 もともと銀行は、学生に勧めにくい就職先だった。一つには、20代の頃の仕事の仕方が窮屈で面白くない。また、最大の理由は、だいたい50歳前後であらかた銀行本体から関連会社や融資先などに出向する、選手寿命の短さだ。他の業界、たとえば総合商社は、多くの社員が55歳くらいの役職定年で給料は下がるが、60歳まで現役だ。端的に言って、これまでの銀行は、優秀な人材を採って、これを無駄に使ってきた。

 加えて、序列を重んじる銀行の減点法的な人事評価が、今の若者の価値観に合うとは思えない。  

 もっとも、銀行本体から早くいなくなって第二の職業人生を早くスタートすることが結果的に奏功する人もいるだろうし、学歴や成績が優秀で権威を重んじてストレスに強い銀行員向きの性格で、いいポジションを確保して有利に人事競争を戦うことができる人もいるだろうから、銀行の仕組みが全ての人に不適格なわけではない。

 とはいえ、銀行は、フィンテックを理解するような優秀な理科系の人材や、商社からも内定が出るようなエネルギッシュな人材が欲しいと考えているようだ。しかし、行内の価値観やカルチャーを含めて、人事制度を根本的に変えるのでなければ、こうした学生にとって魅力的と思える就職先にはなりそうにない。

 ところが、急激に人事制度を変えようとすると、行内の既存行員の価値観と軋轢を起こし、マネジメント上の危機をもたらす可能性がある。銀行員にとって「人事」はほぼ人生と等価の価値を持つ重大事だから、既存の銀行員の人事に対する既得権や期待を急激に変えることは、相当に危険だ。

 こうした状況に加えて、まだ長引きそうな低金利政策による収益環境の悪化や、新しいテクノロジーによって旧来の銀行のビジネスが急速に置き換えられるリスクがあるのだから、就職先としての銀行に対して、学生が懐疑的になるのはやむを得ない。

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若手行員はどうしたらいいか