転職するにせよ、結果的にしないにせよ、今、何の仕事をしていて、その仕事を続けることは、自分の人材価値にとってどのような影響があるのかを、一年一年慎重に見極めながら勤めるべきだ。肝心なのは、「外の」視点から自分の人材価値を評価することであり、「中の」人事評価に敏感になることではない。

 30代後半以降の行員さんは、「セカンドキャリア」について早く考え始めることをお勧めする。一般に、「60歳から後に、自分は何をして稼ぐか…」という目処を考え始めるのは45歳くらいからが望ましいと思うが、銀行員は第一線の選手寿命が短いのだから、40歳の時点で考え始めても早過ぎるということはない。

「将来は、楽な関連会社で面倒を見てもらえるのではないか」といった希望的な期待を頼って、「ゆでガエル」のようになる"愚"は避けたい。

 新しい仕事をする場合、スタートが早いと有利な面がある。今後の環境悪化を甘く見ずに、周到な準備をされたい。

 筆者は、一人ひとりの銀行員に対して悪意はないのだが、例えば、筆者の関係する資産運用の世界で言うと、銀行の窓口で売っている投資信託や貯蓄性の保険などは、全く顧客にとって不適切なものばかりだ。金融庁の言う「フィデューシャリーデューティー(顧客本位の業務運営)」の真逆だ。

 本稿をお読みの銀行員さんが、例えば顧客に投資信託を売っているのだとすれば、あなたは、世の中のためになっているというよりは、世の中に害をなしていると筆者は評価する。高い手数料を取る投信を売ることも止められないし、他にすることもないのであれば、勇気を持って銀行など辞めてしまうといい。

 実質的に消費者金融会社のフロントになって、総量規制の外でカードローンを増やすようなビジネスも感心しないので、止めた方がいい。その方が、世の中のためだ。

 もちろん、生活の問題も、キャリアの問題もあるから、いきなり辞めることはお勧めしない。周到に準備して転身を図り、いい人生を送ってほしい。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)