実は東京モーターショーのハイテクショー化の試みは今に始まったことではない。存在感を急速に落としはじめた2009年以降、自工会はずっと同じようなことを言ってきた。そして、毎回失敗していた。

 まず、グローバル化が進み、日本勢もワールドワイドで企業活動を行っているという状況の中、シリコンバレーを擁するアメリカ、スタートアップ企業が次から次へと生まれる中国、年間1700万台の消費地であるEUなどを差し置いて、東京が他を圧倒するハイテクショーになれると考えるのが身の程知らずもいいところである。

 それだけではない。先端技術をエンドユーザーに「面白い」と感じてもらうのは、実はとても難しい。

 例えば、自動車業界で話題となっているビッグデータへの接続技術、コネクテッドひとつとっても、当の自動車メーカーが何をやれば素敵な未来を築けるかということについて、確固たるイメージを持てていないのだ。

「コネクテッドで自動運転が高度化する」「交通需要マネジメントが進んで渋滞がなくなる」「カーシェアをやりやすくなる」――。

 こうしたステレオタイプの主張が多くのメーカーのブースでオウムの物真似のごとく垂れ流されていた。それ以上のイメージはないのかと言いたくなるところだ。

 体験プログラムも操作によってリアルでない動画をイメージとして見せられる程度。3Dコンテンツを見慣れた現代の若者たちにとっては、子どもだましの域を出ないとしか感じられないであろうものばかりである。

 結局、先端技術をナマで見せて面白がってもらえるのはビジネスショーの話であって、顧客がお金を払ってクルマを楽しみに来るユーザーショーである東京モーターショーで先端技術をテーマにする場合、それで何を見せるか、無から有を生み出すようなクリエイティビティこそが重要だ。

 悲しいかな、遊びより労働を上に置くのが絶対善と考える生真面目な国民性の日本にとって、先端技術で遊びを想像するのは苦手分野。先端技術は得意分野という単純思考で勝負をかけてみたら、世間から見ればそれは苦手分野だったというわけだ。

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