本庄萌(ほんじょう・もえ)1987年生まれ。犬や猫のみならず動物全体の保護に関する研究を続ける、法学者の卵。京大法学部卒業後、アメリカのロースクールで動物法を学ぶ。帰国後の現在も、一橋大学大学院に在学中。15年間の海外生活中、イギリスでの高校生時代にアニマルシェルターを訪ねたことで、動物保護の道に進むことを決意。その後、10年かけて、日本はもとより、動物保護先進国の、アメリカ、ドイツ、イギリスをはじめ、スペイン、ロシア、ケニア、香港と、8ヵ国のシェルターを巡り、さまざまに進化する現状を見続けた。人と動物たちのより良い関係を願って、研究、提言などを行っている
本庄萌(ほんじょう・もえ)

1987年生まれ。犬やのみならず動物全体の保護に関する研究を続ける、法学者の卵。京大法学部卒業後、アメリカのロースクールで動物法を学ぶ。帰国後の現在も、一橋大学大学院に在学中。15年間の海外生活中、イギリスでの高校生時代にアニマルシェルターを訪ねたことで、動物保護の道に進むことを決意。その後、10年かけて、日本はもとより、動物保護先進国の、アメリカ、ドイツ、イギリスをはじめ、スペイン、ロシア、ケニア、香港と、8ヵ国のシェルターを巡り、さまざまに進化する現状を見続けた。人と動物たちのより良い関係を願って、研究、提言などを行っている

石黒謙吾(いしぐろ・けんご)著述家・編集者 1961年、金沢市生まれ。著書には、映画化された『盲導犬クイールの一生』『2択思考』、“分類王”の『図解でユカイ』他、『エア新書』『短編集 犬がいたから』『どうして? ~犬を愛するすべての人へ』など幅広いジャンルで多数。近刊著書は『分類脳で地アタマが良くなる』。プロデュース・編集した書籍も、ベストセラー『ジワジワ来る○○』(片岡K)、『ナガオカケンメイの考え』(ナガオカケンメイ)、『負け美女』(犬山紙子)、『ネコの吸い方』(坂本美雨)、『犬と、いのち』(渡辺眞子) 『マン盆栽の超情景』(パラダイス山元)など200冊以上
石黒謙吾(いしぐろ・けんご)

著述家・編集者 1961年、金沢市生まれ。著書には、映画化された『盲導犬クイールの一生』『2択思考』、“分類王”の『図解でユカイ』他、『エア新書』『短編集 犬がいたから』『どうして? ~犬を愛するすべての人へ』など幅広いジャンルで多数。近刊著書は『分類脳で地アタマが良くなる』。プロデュース・編集した書籍も、ベストセラー『ジワジワ来る○○』(片岡K)、『ナガオカケンメイの考え』(ナガオカケンメイ)、『負け美女』(犬山紙子)、『ネコの吸い方』(坂本美雨)、『犬と、いのち』(渡辺眞子) 『マン盆栽の超情景』(パラダイス山元)など200冊以上

「放し飼いシェルター」オーナーの女性と、新入りの白い犬。右側には4輪の補助器具を付けた黒いラブラドールレトリーバー(スペイン)
「放し飼いシェルター」オーナーの女性と、新入りの白い犬。右側には4輪の補助器具を付けた黒いラブラドールレトリーバー(スペイン)
猫カフェシェルター(日本)
猫カフェシェルター(日本)
横浜市の動物愛護センター(日本)
横浜市の動物愛護センター(日本)
子どもにもわかりやすい猫の繁殖力を伝えるポスター(ドイツ)
子どもにもわかりやすい猫の繁殖力を伝えるポスター(ドイツ)

 アメリカのロースクールで学び、現在、一橋大学大学院で動物福祉を学ぶ、法学研究者の卵、本庄萌さんが、高校生から現在まで世界8ヵ国のアニマルシェルターを巡り、その現状を『世界のアニマルシェルターは、犬や猫を生かす場所だった』という一冊にまとめました。構成・編集を担当したのは、『盲導犬クイールの一生』の著者、石黒謙吾さん。お二人の対談は犬や猫から、家畜、野生動物、法律、環境問題まで大きく広がっていきました。

●飼育しない人から「離婚の養育費」的に支払っていただく

石黒 動物保護に関わる団体、施設、集まり、などが、自分たちで「お金を生み出す」ことに対して、日本は積極的でいいとは感じます。寄付以外でもたとえばグッズ販売とか。これは、盲導犬事業のほうでも、アメリカの例などで漠然とですが外国との差を知ったこともありまして。

本庄 そうですね。諸外国では保護のためにかかるお金を作るために、いろいろと工夫してますね。たとえば、「離婚の養育費みたいなシステム」がありますね。

石黒 あ、あれは、原稿で読んで、なるほど! と思いました。

本庄 保護施設に動物を持ち込むのならば、それ以降、毎月とか、施設にお金を支払っていくわけですね。もちろん、ずっと育てていくのがいいのですが、いろいろな理由でそれがかなわなくなったのなら、お金を払って世話を依頼するという感じですね。

石黒 よく考えられてますよね。

本庄 物理的に縛りをつけることによって、捨てる人も減るはずですし

石黒 例で出てきたのはスペインしたっけ?

本庄 はい。バルセロナの自然保護区にある「放し飼いシェルター」です。オーナーご夫妻が大金を投じて土地を買って運営しているんです。

石黒 そうそう! 民営というのがまた驚きましたよ。そして、その「離婚後の養育費」(笑)は、いくらなんですか?

本庄 2013年に訪ねたのですが、毎月60ユーロでした。いまのレートなら7800円ってところですね。どうしても飼育放棄しなければならない飼い主から、その金額を支払ってもらう約束をしてから引き取るんです。

石黒 いつまで続けるのですか?

本庄 新しい飼い主が見つかる場合はそこまでですが、そうならなければ、天寿をまっとうするまでずっと、ですね。

●脚が動かなくても、補助器具で「放し飼いシェルター」を走り回る犬たち

石黒 考えて見れば当然とも言えますね。最期まで面倒見られないなら飼ってはいけないというのが、動物と暮らす大前提ですもんね。あ、それと、バルセロナのそこは、ケージや部屋ではなく、放し飼いというのが、のびのびしていていいなあと。理想的ですよね。

本庄 そうなんですが、じゃあ今の日本で実現できるかというと、難しいかもと思います。なによりも広い土地がないといけませんから。狭いと、放し飼いすることで逆に、犬同士の相性問題などでストレスが溜まってくることもありえますし……。

石黒 なるほど! ただ、放されてるからいいということではないと……。普通のペットのドッグランとは考え方を変えなければいけないんですね。

本庄 そもそもが、なにかしらの問題行動があったり、病気やケガだったりと、オーナーさんが飼い切れないで来てる犬たちですから。

石黒 ケガといえば、そうそう、本の表紙になっている犬は、後ろ脚部分に車輪がある補助器具を付けていますね。

本庄 あの放し飼いシェルターには、表紙の犬もそうなんですが、後ろ脚が動かなかったりで、補助器具を付けた犬がたくさんいました。そんな犬たちがいっぱいいて、元気に走り回っているんです!

石黒 写真でも、犬とスタッフのいい表情が伝わってきて、胸を打つものがありますよね、いい意味で。ああ、がんばってるなあ! と。

本庄 写真にもちらっと出てくる黒いラブラドールは、前脚もうまく動かないとのことで、前後で4輪の補助器具なんです。誰かがひもを引っ張ると進めるようになってます。

石黒 工夫されてますねえ。

本庄 1頭1頭の生活の質を高める取り組みをひしひしと感じられました。そして犬たちがいきいきしてるので、行くと元気になって、ああ、また来たいな! って思えるんです。

●「猫カフェシェルター」は6年半で4000匹も譲渡!

石黒 少し話しが戻るんですが、保護活動のために自主的にお金を生み出すことについて、ビジネス面から成立させるためのいいアイデアだなと感心したところがありますよ。しかもそれは日本で……。

本庄 あ、東京の猫カフェシェルターでしょうか?

石黒 そうです。あの試みはいいですねえ。そもそもあの女性オーナーの実行力には、頭を垂れますよ。

本庄 大塚の「NPO法人東京キャットガーディアン」では、人気の猫カフェとシェルターを合体させています。保健所と連携して猫を引き取って、猫カフェで飼うというスタイルですね。そして、入場料を払って来てもらい、これが寄付金ということで、資金を生み出します。そして、預かった猫を譲渡していくのです。

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