石黒 ほんと、殺処分を減らしていくために、四方八方にメリットは大きいですね。データとしてどのくらいでしたっけ?

本庄 スタートして6年半で、4000頭の譲渡をされてます。しかも右肩上がりで増えているとか。

石黒 すごい数ですよね。そしてグッズもチャリティ販売して、資金を捻出すると。

本庄 定期的にテーマを決めて、カレンダーとかマンガとかを並べています。保護活動を持続させていくのがなにより大切なことですし、そのためには資金はどうしてもかかります。営利追求ではなくソーシャルビジネスとして、その問題に取り組んでいますね。

石黒 理念と共に物理的な努力も課題ですね。しかし現場は、そういう意義を忘れそうなほどすごくアットホームですね、写真見ると、インテリアがほのぼの落ち着く感じで。

本庄 夕方になると間接照明になったり、インテリア全体がやさしい感じで、たちが思い思いの場所で、のんびりしている様子は、ずっと見ていたくなります! 

石黒 わかるなー(笑)。あれだと、ずっと出てこられなくなりそう。

本庄 住みたいですね(笑) オーナーの掲げる目標は、「1都市に1保護猫カフェ」です。

石黒 すばらしい。さまざまな団体ともども、応援していきたいですね。

●保護活動と獣医師は密接に関わり合っています

石黒 うちの猫は保護猫なんですね。6年前に来た時、先に「センパイ」という犬がいてので、「コウハイ」という名前なんですが(笑)。

本庄 ええっ、面白い!

石黒 そのコウハイ、譲渡していただいたのは、「ミグノンプラン」というところで、ここも、猫カフェとは違いますが、資金を得るためにいろいろ工夫していますね。ここのサイトのトップページにある「代表メッセージ」を読むとすぱっと伝わってきますよ。

本庄 糸井重里さんもバックアップしている保護活動団体ですね。

石黒 代表の友森玲子さんは、とんでもなく行動力があり、かつ、面白い人で(笑)。暗く重いイメージを払拭して明るく活動しています。昔からブログを見ていたのですが、たとえば看取るときの乾いた表現や、笑いありでポジティブなイメージを膨らませていく感じが僕の中でもエポックメイキングでした。

本庄 そのあたりは、海外の保護活動に通じる、先進的な感じですね。資金面の工夫とはどのようなものですか?

石黒 うちの猫が来た頃は、寄付とは別にショップとしてグッズやフードを販売し、ペットサロンもやっていました。青山に移ってからは、獣医さんがいて動物病院があるという形です。

本庄 たいへん有意義な試みですね! 保護活動と獣医師は密接に関わり合っていることは、世界のシェルターを回って感じたことです。アメリカ、オレゴンのシェルターでは、獣医師の卵の実習制度がありました。シェルターにとっては経費節減になり、実習生は現場経験が積めるという一石二鳥なシステムなんです。

石黒 しかもなにより、動物たちにとっては、医学的環境が充実するという、これまた四方八方にいいことづくめ。実は僕の伯父ふたりが獣医師だったので、獣医さんというとそれだけで親近感が(笑)。

本庄 あ、そうだったんですか!?

石黒 しかも、従軍の獣医という……。第二次世界大戦で、軍にいる馬の医務をやっていたんですよ。将校が乗ったり、まだ、騎馬隊もいたものですから。

本庄 なるほど! 動物福祉としても関わり深い問題といえますね!

石黒 終戦後、シベリア抑留された下の伯父は、石川県、能登の畜産科で牛の病気の研究に携わってましたから、この本に出てくる畜産関連の保護活動についても興味深かったです。あ、上の伯父はその後、石黒犬猫病院を始め、ペットのほうに進みましたが(笑)。

●2匹の猫が4年で2万匹に増える!

本庄 獣医師さんの存在なしでは、保護活動はなりたたないと言っていいぐらい、重要な役割を担っていますね。殺処分を減らす、捨てられたり、野良猫の増加などには、去勢手術が大事なこととなってきますが、そういったことはじめ、獣医師さんがいないとはじまりませんし。

石黒 聞くところによると、日本でも、保護活動につながる、野良猫の去勢手術をボランティア、手弁当で行っている、心ある獣医師さんもいるらしいですね。

本庄 仕事としてでなくという心根に頭が下がります。そして去勢問題についてですが、特に猫は、驚異的な繁殖率なのです。ドイツ、アーヘンの市営シェルターを訪ねた時に見かけたポスターが……。

石黒 あれは驚きでした!

本庄 2匹の猫が4年で2万匹に増える様子が、グラフィカルになっていてすごくわかりやすかったです!