まして、いわゆる「エスタブリッシュメント」と言われるような誰もが知る企業であれば、脈々と受け継がれてきた組織の管理ルールが存在し、昇進や懲罰に関する独特の基準があり、コンプライアンス(法令順守)の面からも管理職として勉強しておかなければいけないこともたくさんあります。

 こうしたものをある程度若いうちに、2~3年くらい現場から半強制的に剥がされて集中的に勉強しておくことは、自身のキャリアにおいてプラスに働くと思います。

 また、とくに大企業の場合、会社からの評価と出世はリンクしており、評価の高い人の昇進は早くなります。つまり、ある年齢でどのポジションにいるかにより、その人がどう評価されているかのバロメーターになるので、転職の際はそこをしっかり見られます。

 このように、マネジメント経験を積むことと会社評価のバロメーターを上げるという2つの点では、将来の転職を考えている人は管理職になれる機会があれば、なっておいたほうがいいのです。これは管理型管理職もプレイングマネージャーも同様です。

●なぜ管理型管理職を長くやり過ぎるのはよくないのか

 ただし、管理型管理職を長くやり過ぎるのは危険です。繰り返しになりますが、現場から長期間離れると最前線感を失ってしまい、使えない人になってしまう恐れがあるからです。30代から40代前半の人であれば、管理型管理職をやる期間は2~3年が限度でしょう。

 これが40代後半くらいになり、経営に近いところで仕事をするようになると、また話は変わってきます。

 キャリアとしての連続性はあるものの、管理職と経営職は別の職種です。事業部長クラスになると、経営会議に出席するなど経営職の要素も混じってきますが、その下の部長や課長は経営職ではありません。この辺の線引きは会社によって異なりますが、一般的に部長、課長は数字や評価を取りまとめる、いわばマネジメント事務職の色彩が強いことが多い。

 経営職の色彩が強い仕事をできればよいのですが、マネジメント事務職の色彩が強い場合、勉強になることはあまりありません。「使えない人」になってしまう前にさっさと辞めたほうがよいでしょう(株式会社クライス・アンド・カンパニー代表取締役・丸山貴宏)