上司の姿を見て、「管理職になりたくない」と思ったことはありますか?
上司の姿を見て、「管理職になりたくない」と思ったことはありますか?
『そのひと言で 面接官に嫌われます』丸山 貴宏 (著)
『そのひと言で 面接官に嫌われます』丸山 貴宏 (著)

●昔と現在で大きく変わった管理職の業務内容

 管理職になりたくない若手社員が増えていると指摘されて久しくなります。これに対して「向上心が足りない」と憤る方もいるでしょうが、そう思う若手社員が増えるのは無理からぬところがあります。

 過去を振り返ってみると、昔の管理職は本当に恵まれていました。たとえば営業マネージャーであれば、課長に昇進した時点で顧客はすべて部下に引き渡し、課全体の数字の取りまとめや部下の営業支援、評価、人材育成をするのが主な仕事の内容でした。管理職に昇進すると、営業の第一線から離れて全く異なる業務に移ったわけです。

 こうした管理職はまだ大企業で見かけることがありますが、現在は自分も顧客を持ちつつ、部下のマネジメントも行うプレイングマネージャーが多くなっています。つまり、昔の管理職の仕事に加えて、自分も現場の第一線に立ち続けるのですから、管理職という名前は同じでも負担はずっと重い。ですから「管理職になりたくない」という人が増えるのは、ちゃんと理由があるのです。

 ただし、転職という観点から考えると、管理職になれる機会があれば、基本的にはなっておいたほうがよいでしょう。「基本的に」というのは、管理専門型の管理職をどう考えるかという問題があるからです。

●将来のキャリアのために管理職の経験はしたほうがいい

 企業が中途採用を行う理由の大半は、売上や利益を増やすことにあります。そのため「この人を採用したらどれだけ売上を伸ばせるか」、あるいは「どれだけコストを下げられるか」といった、非常に目先的で、即戦力としての観点から候補者は見られます。

 プレイングマネージャーなら何も問題はありません。ところが、管理専門型の管理職を長く続けてしまうと、自分の顧客を持っておらず、現場から離れてマーケットの感覚も失ってしまうため、転職しようとする際にとても不利になる可能性が高い。中途採用では最前線感や現場感の有無が重要なのです。この点だけを考えれば、管理専門型の管理職にはならないほうがいいという判断になります。

 しかし転職した後、年月を重ねてある程度の年齢になれば、現場だけではなく、マネジメントの仕事も求められるようになっていきます。戦略を立てて組織を動かしていったり、部下の育成をしたり。これらは現場の第一線に従事するのとは全く別の業務です。

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