私はこのジーユー事業にもっとフォーカスすれば、ファーストリテイリングはZARAを超えられる日が来るのではないかと考えているのだが、段階を踏みながらその理由を説明していきたい。

●ユニクロとジーユーの明暗を分けるカジュアルとハイファッション

 そもそも創業当時、ジーユーは今と違う事業コンセプトだった。その点においては、今でも誤解されているかもしれない。2006年にオープンしたジーユーは、当時傾きかけていたダイエーの店舗への集客目的で開店したユニクロの下位ブランド店だった。ユニクロほどの品質ではないが安いというのが当時のジーユーのコンセプトで、2009年には990円ジーンズがヒットして、それなりの存在感をアピールしていた。

 ジーユーの本当の転機は2011年で、この年ジーユーはユニクロの下位ブランドのポジションを捨てて、「ハイファッションブランド」へと舵を切った。ここが現在のユニクロとの成長率格差を生んでいる最大のポイントだ。

 ユニクロや2010年までのジーユーは、定番カジュアルを安価に販売する衣料品店である。それに対してハイファッションとは、簡単に言えば最新の流行ファッションを安価な価格で提供する事業コンセプトのこと。H&MもZARAも、実はジャンル的にはハイファッションの衣料品店である。

 別の言い方をすると、何年でも安心して着られる服を売っているのがユニクロ、今年着ると「いいねえ」と言われるが2年後くらいに着ると「何それ?ダサ!」と言われるリスクのある服を売っているのが、ジーユーでありH&MでありZARAだということになる。

 さて、ユニクロが今直面している最大の成長の壁について検討することで、世界のファッションブランドのランキングの秘密が理解できるようになる。その成長の壁とはタンスのキャパシティである。

 安くていい定番カジュアルは、最初のうちはどんどん買うことができるが、どの家庭でもどこかの段階でタンスの中がカジュアルウェアでいっぱいになってしまう。ユニクロが消費者に浸透すると、ある時点から先はタンスの中身を捨てないと新しい服が買えなくなる。

 ところが残念なことに、ユニクロの商品は品質がいい。4~5年は着ないと形が崩れてこない。だからユニクロの定番商品の売上は、その地域に店舗が根を下ろして10年くらいすると頭打ちになってくる。

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