そして来年や再来年、ジーユーの顧客はその年流行している最新のブルゾンに買い替えるだろうが、ユニクロの顧客はまだMA-1を着続けるだろう。私など10年も前にユニクロで買ったMA-1を、今年またブームが来たのをいいことに洋服ダンスから引っ張り出して、毎日のようにヘビーローテーションで着ているくらいだ。

 ファッションとはもともと1年で陳腐化するから、業界が発展してきた。日本流行色協会が毎年、その年の流行の色を決めるのは、商品を陳腐化させる必要からだ。2016年は大地のようなアースブラウンが流行するが、2017年になったらそれは流行遅れになって、大胆で濃い赤が最新の流行になることが業界として決まっている。

●ジーユーはユニクロを超える? ファストリの経営判断やいかに

 このように商品を陳腐化させる仕組みが、ユニクロのビジネスモデルには存在していない。

 再びファーストリテイリングが発表している世界のアパレルランキングを見直してみよう。世界3位のGAP、世界4位のユニクロ、(5位のビクトリアシークレットを飛ばして)6位がカルバンクライン、7位がラルフローレンと、ユニクロと同じビジネスモデルの壁を持つアパレルメーカーは皆、1~2兆円の壁の前で立ち止まってしまっている。

 そのランキングで突きぬけている1位のZARAと2位のH&Mは、どちらもハイファッションであり、商品の陳腐化がビジネスモデルに織り込まれているために、突き抜けた成長ができるのだ。

 さて、ここまでユニクロ事業の足踏みが続いた以上、そろそろファーストリテイリングの経営陣も将来の成長目標3兆円を達成するためにはハイファッションの方が有利だということに、気づいているのではないだろうか。

 そう考えると、経営陣がユニクロを成熟事業だと諦め、ジーユーに経営資源を振り向けたときに、ファーストリテイリングの再成長が始まるだろう。ファーストリテイリングの経営陣は、今の日本の中では非常に強い布陣である。だからこそ近い将来、ジーユーがユニクロを超える日が到来するのはまず間違いないと私は思うのだが、どうだろう?(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)