そのような構造にあるユニクロの近年の成長を支えてきたのは、新ジャンルだ。普通の下着に代わるヒートテックやブラトップ、普通のルームウェアに代わるリラコやステテコ、そして古いブルゾンに代わるウルトラライトダウン。そのような新しいジャンルの商品が誕生することで、消費者がようやく古い下着や上着を捨てて新しい服を購入する。そうして新ジャンルがユニクロの売上増に貢献することになる。

 この自転車操業のような「新ジャンル開発」が停滞したのが、2016年の国内ユニクロ事業の決算が意味するところだった。一方でジーユーにはこの不利がない。

●1シーズンしか着れないから新たな需要が生まれる好循環

 ジーユーもそうだし、H&MやZARAも同じだが、ハイファッションの店舗にはちょっと嬉しくなるような、これまでにはない新しいファッション商品が並んでいる。ついついその商品にハッとなって手にとってみると、値札が結構安い。襟が細めで斬新なデザインのカジュアルシャツが1990円だったりするので、ついついそれを買ってしまう。

 これは私がH&Mで購入したシャツの話だが、その後の話を続けると、そのシーズンは結構気に入ってそのシャツを着まわしていた。だが、シーズンが終わる頃になると生地がややよれてくるし、友達の前でも一通りそのシャツの披露は終わった感じになる。よほど気に入れば次のシーズンも着るかもしれないが、価格的にも商品的にもファッション的にも、シーズンの終盤には商品寿命が終わる感じになった。

 だから次のシーズンには、ついつい別の商品を買うことになる。これがハイファッションのビジネスモデルの有利なところである。そしてジーユーも、基本的にはこのハイファッションを標榜している。

 たとえば今年流行しているMA-1というアメリカの空軍のブルゾンだが、ユニクロのMA-1は5年は着続けることができそうだ。一方でジーユーのWOMENでは、MA-1をロングコートにデザインしたちょっと変わった製品を売っている。「今年のMA-1ブームの中ではおしゃれで目立つが、来年はどうか」と思わせる製品である。でも価格が安いから、女性のジーユーファンから見ればそれで「買い」なのである。

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