これだけ収入が激減するのだから、不足分を貯めておかなければ、今と同じ生活水準を維持できないのは明白だ。それなのに計画的な貯蓄もせず「なんとかなる」と思っている人は、“下流老人”になるリスクが高いといわざるを得ない。あなた自身が“下流予備軍”かどうか、簡単に判定するポイントがある。次の3つの質問に、あなたは即答できるだろうか。

(1)世帯で1ヵ月に使っている金額は?

(2)昨年1年間で貯蓄できた金額は?

(3)60歳時の住宅ローン残高は?

 いずれも、万円単位のざっくりとした金額でかまわない。もし、すぐに答えられなかったのなら、あなたは自分が“下流予備軍”だと自覚する必要があるだろう。

●60歳時の住宅ローン残債が1000万円以上あるのは要注意

(3)の60歳時の住宅ローン残高については、どうだろう。住宅ローンを返済中の人は、「返済は70歳まで」というように、完済年齢は頭に入っているものだ。ところが、定年になる60歳でいくらローンが残っているのかという点については、ほとんどの人が考えていない。

 そもそも、住宅ローンを借りるときに多くの人が気にするのは、「毎月いくらなら払えるか」だ。あなたも、ローンを組むときは「毎月10万円なら返せるな。70歳完済か……まぁ、途中で繰り上げ返済していって、あとは定年時に退職金で完済すればいいだろう」などと考えたかもしれない。

 しかし、その肝心の退職金がいくらもらえるかを正しく知っている人は少ない。そして、60歳時の住宅ローン残高を知っている人もほとんどいない。つまり、多くの人は「いくらもらえるかわからないお金で、いくら残っているかわからないローンを返そうとしている」わけだ。

 おそろしいことに、60歳時の住宅ローン残高を調べると、最近は1000万円を超えている人はザラにいるのが実態だ。一方、退職金は1500万円程度の人が多く、よくて2000万円程度。老後資金がローン返済で、まるまるなくなってしまう人はめずらしくなく、それどころか退職金では返済しきれないケースさえあるのだ。そうなれば年金と、今までの貯金を取り崩して暮らしていかなければならない。

 まずは、60歳時の残高がいくらになるのか、調べてみる。変動金利で借りている人は銀行にきいてみてもよいだろう。

深田晶恵(ふかた・あきえ)
株式会社 生活設計塾クルー 取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)、(株)生活設計塾クルー取締役。1967年北海道生まれ。外資系電器メーカー勤務を経て96年にFPに転身。現在は、特定の金融機関に属さない独立系FP会社である「生活設計塾クルー」のメンバーとして、個人向けコンサルティングを行うほか、メディアや講演活動を通じて「買い手寄り」のマネー情報を発信している。20年間で受けた相談は4000件以上。日本経済新聞、日経WOMAN、レタスクラブ等でマネーコラムを連載、ほかにダイヤモンド・オンラインでの『40代から備えたい 老後のお金クライシス!』のネット連載も好評。主な著書に『30代で知っておきたいお金の習慣』『投資で失敗したくないと思ったら、まず読む本』『住宅ローンはこうして借りなさい 改訂5版』(共にダイヤモンド社)、『共働き夫婦のための「お金の教科書」』、『図解 老後のお金安心読本』(共に講談社)他多数。