小規模の企業は気候変動に「賭け」をしています。大企業のように投資家に詳しく答える必要はありません。もし大企業で、株主に対して1年、2年、さらにもっと長くリターンがなければ、その会社は悪い会社だと思われます。気候変動はゆっくり動きます。本に出てくる企業のほとんどは実際のところ小規模の会社です。彼らは自分のお金を使っているか、ヘッジファンドのお金を使っているので、大企業と同じような投資家からのプレッシャーがありません。

 一方、大手石油会社のシェルは、30年、40年先を見ている企業です。その点では非常にユニークです。彼らは気候変動だけに焦点を合わせているわけではありません。気候変動に関することは、あくまでもプロジェクトの1つなのです。

――なるほど。あなたは気候変動に焦点を合わせている小規模の起業家たちを「vulture(ハゲワシ、他人を食い物にする人)」と考えますか?

ファンク:最初に取材を始めたときはそう考えていました。温暖化で儲けるなんて非常に皮肉で、ハゲワシ的なことだと。しかし、いったん人に会って取材を進めると、もっと複雑なことであることがわかりました。多くの人は世のためにいいことをしていると思っています。たとえば、水に価格をつけることで水危機の役に立っています。環境危機を助けています。南スーダンの部族軍長とパートナーを組んだ投資家(フィル・ハイルバーグ)であっても、スーダンにビジネスをもたらしているのは確かで、それはいいことでしょう。つまり彼は純然たるハゲワシではありません。アフリカに資本主義をもたらすこと、それ自体はいいことです。私は取材していて、こういう人たちも我々と同じような人間であると思いました。

●そして製薬会社が儲けだす。

――この本は気候変動で儲けているケースをたくさん提供してくれますが、“Windfall”(オリジナルのタイトル)を出してから2年少し経ちます。本には書かれていない新しいケースはありますか?

ファンク:本を出してからまもなく、バイエルという薬品会社を調べていました。気候変動のインパクトがどれくらいあるとバイエルが考えているのか、彼らは公表しました。その1つが「アレルギーの薬がもっと必要である」ということです。春になると花粉が飛びますが、温暖化によってその量がもっと増えますから。さらにマラリアやデング熱、最近ではジカ熱など、蚊を介する病気が増えているので蚊帳の必要性ももっと出てくるだろう、と。バイエルのことは本でも言及しましたが、深く書くことはできませんでした。いろいろ起こったのは、本を出した後でした。

――温暖化によって増えるであろう花粉症やジカ熱などで、製薬会社が儲かる可能性がある、ということですね。

ファンク:他にも、天候保険を売っているClimate Corporationという会社があります。今は巨大企業のモンサント社に10億ドルで買収されました。将来の天候について、私たちは少しは予測できますが、温暖化により天候を予測するのはますます難しくなっています。だから彼らは農民に天候保険を売るのです。これが悪いことかどうかわかりません。シェルについても新しいことが起きました。シェルは北極を掘削しようとしましたが、うまくいかず撤退しました。

――この本は、気候変動や地球温暖化について、読者に新しい視点を与えたと思います。どうもありがとうございました。