気候変動は、いったい「誰」の利益になっているのか――。地球温暖化で儲けを狙う人たちを追った『地球を「売り物」にする人たち』。6年をかけて、世界24ヵ国、アメリカだけで数十州をめぐって書かれたジャーナリズムの結晶ともいえる本書の著者マッケンジー・ファンク氏に、インタビューを敢行した。日本への影響、そして今まさに立ち上がりつつある新手の「温暖化ビジネス」とは?(聞き手:国際ジャーナリスト 大野和基)
●「日本沈没」のシナリオを回避する現実的すぎる手段
――気候変動脆弱性指数では日本は170ヵ国中86位ですが、これは何を意味するのでしょうか。
マッケンジー・ファンク(以下ファンク):日本を特別調査したわけではありませんが、このランキングには意外なことがよくあります。オランダは国土が低く、海水の水位が上がってきているので、海面上昇によって水没するのではないかと思うでしょう。でも指数を見るともっとも脆弱ではない国の中でも、トップに近い。それは、オランダには防波堤を建設するだけの資金が十分あるからです。
この指数には2つの要素があります。1つは環境変化がその国にどれくらい影響があるか、ということを示すこと。もう1つはその影響と戦うための資金がどれくらいあるか、ということです。日本が86位ということは、脆弱ではあるが、特に脆弱ではないということです。私は科学者ではありませんが、とある研究によると日本が位置する域は他の域よりも海面がはやく上昇しています。
さらに日本はかなりの量の食糧を輸入しているので、食糧の点から見ると脆弱でしょう。食糧が入手しにくくなり、国がナショナリスティックになれば、日本にとってはさらに問題が出てくるでしょう。防波堤を建設する資金が十分なければ問題になるでしょう。最近の日本の経済の縮小を見ると、資金が足りなくなるかもしれません。もしこれが1980年代、1990年代であれば、もっとも脆弱ではない位置にあったでしょう。防波堤を建設する資金が潤沢にあったからです。でも時代は変わりました。
●温暖化ビジネスの現場で見た、ハゲタカたちの素顔
――本の中に出てくるシェルのような大企業と、気候変動に乗じてお金儲けをしようとする起業家をあなたは区別しますか?
ファンク:多くの違いがあると思いますが、倫理的な面での違いがあるものもあれば、プラクティカルな面での違いもあります。