そのころから、プラットフォーマーと記事を書く提携媒体との収益面でのバランスをずっと考えてきました。初期のころは料金相場もなく、まずは固定料でお支払いをしていました。まだオンライン広告も大きくなかったので、しばらくYahoo!ニュースは大赤字で、鳴かず飛ばずみたいな時代がありました。その後に徐々にインターネット広告が成長して、Yahoo!ニュースの収益も伸びて、損益分岐点を超えました。しかし、その後に「Yahoo!ニュース一人勝ち」のような声もいただいていました。

 そこで、07年にYahoo!ニュースを読みに来た読者を、リンクを通じて提携メディアに還元するという「トラフィックバック」に踏み切ったのです。当時は自社サイトに来た読者を外に流すというのはご法度でしたが、私が責任者として判断しました。ズバッと読者を流して、それで自由にマネタイズをしてくださいということです。今度はスマホの世界で、同じような貢献をしたいと思っています。
 
──今後、オンラインにおけるニュースはどのような方向に発展していくと考えますか。

 まずヤフー自身は、大量のビッグデータを駆使できるニュースサイトになりたいです。編集者とエンジニアにデータサイエンティストを加えた「ハッピートライアングル」で、新しいニュースの世界をつくろうと思っています。

 また、コンテンツとしては速報の「次」をやりたいと思っています。かつて速報といえば通信社や新聞社でしたが、これだけスマホが普及すると、もう個人による発信に勝てません。昨年あった御嶽山の噴火では、数分後にはネットで現場の様子が見られるようになりました。速報は限りなくライブになってゆき、現地に早く駆け付けるという取材の価値は著しく落ちるでしょう。

 一方、人間にしかできない仕事は、相手から話を引き出すようなインタビューや、池上彰さんがやるような分かりやすい解説です。断片的なニュースで、安保問題やTPPなどのトータルな課題は分かりません。これまであまりPV的には伸びなかったものですが、ヤフーは今後プッシュします。

 こうした記事が、かわいいの写真3枚を貼り付けたものと変わらないとなれば、誰も取材をやらなくなります。Yahoo!ニュースは自ら実験をやりながら、新しい挑戦をしたいと思っています。

 もう一つ加えるなら、ヤフーはニュースの書き手と読者が直接つながるような形に挑戦したいと思っています。インターネットは本来、作る人と、読む人が直接つながるのが最高に面白いところです。

 組織ジャーナリズムにはもちろん素晴らしさがありますが、フリーランスや個人のジャーナリストがインターネットを通して直接ご飯を食べていけるような世界を作っていきたいと思っています。そのような実験はYahoo!ニュース個人という形で閉じた形でやっておりますが、今後はそういう世界観を広げていきたいと思っています。