編集者 荻野真友子(おぎの・まゆこ)三省堂 出版局・辞書出版部早稲田大学大学院教育学研究科修士課程にて日本語学を専攻、修了後、フリー校正者・ライターを経て、三省堂に入社。辞書出版部にて未就学児・小学生向けの辞書や絵じてん等を手がける編集室に所属。絵じてんシリーズのほかに『三省堂 例解小学漢字辞典』や言語学の単行本、三省堂辞書サイト(http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp/)などの編集を担当する。日々、言葉の増える2歳児の育児に奮闘中
編集者 荻野真友子(おぎの・まゆこ)
三省堂 出版局・辞書出版部

早稲田大学大学院教育学研究科修士課程にて日本語学を専攻、修了後、フリー校正者・ライターを経て、三省堂に入社。辞書出版部にて未就学児・小学生向けの辞書や絵じてん等を手がける編集室に所属。絵じてんシリーズのほかに『三省堂 例解小学漢字辞典』や言語学の単行本、三省堂辞書サイト(http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp/)などの編集を担当する。日々、言葉の増える2歳児の育児に奮闘中
『こども きせつのぎょうじ絵じてん』小型版(三省堂)
『こども きせつのぎょうじ絵じてん』小型版(三省堂)
『こども きせつのぎょうじ絵じてん』小型版(三省堂)
『こども きせつのぎょうじ絵じてん』小型版(三省堂)

 年中行事や記念日の由来、歴史がわかる絵じてんとしてロングセラーの『こども きせつのぎょうじ絵じてん』に、増補新装版が三省堂から出版された。日本人の季節感に大きな影響を与えた「さとやまのくらし」が新たに追加されたのだ。
 この絵じてんは3歳から7歳向け、オールカラーで(1)年中行事、記念日、祝日を網羅し月ごとに解説、(2)行事についての素朴な疑問に答える絵じてん、(3)絵本を見ながら季節感が身につく、(4)幼児・小学校低学年向けに本文はすべてひらがなを使用、(5)「おうちのかたへ」のコーナーで大人も納得、(6)食べ物や道具の名前が絵でわかる図鑑、(7)親子で楽しめる料理や工作、(8)日本人の原風景「さとやまのくらし」と「きょうは なんの ひ? カレンダー」、(9)巻末の大人向け付録などが特長である。日本人として、一年を通じて季節の行事を知ることは不可欠。親子、先生と園児・児童が一緒に見て読めて学べるじてんだ。

■現代の家庭におすすめ

「日本の季節の行事にはさまざまなものがあり、それを残していきたいという思いで企画しました」という編集を担当した三省堂 出版局・辞書出版部の荻野真友子さんに話を聞いた。自宅や保育園・幼稚園で子どもが手に持てる重さ、大きさというニーズがあってこの小型版も刊行された。並版に比べると若干文字は小さくなるが、親や先生からはコンパクトで軽さがよいと評判のようだ。
 絵じてんは家庭や園、小学校、図書館、そして幼稚園・小学校受験を準備する幼児教室などにも置かれていることが多い。三省堂の絵じてんには『こども ことば絵じてん』『ことばつかいかた絵じてん』『こども マナーとけいご絵じてん』『こども もののなまえ絵じてん』『こども ひらがな絵じてん』『こども かずの絵じてん』『こども ひらがなとかずの絵じてん』のシリーズがある。今年も幼児教室の説明会があったときにそれらとともに出展し、教材としても多くの先生に興味を持たれたという。
 絵本は物語なので最初から読まなくてはならないが、絵じてんはどのページから開いても楽しめる。子どもが好きな絵、興味を持った季節・行事を見ることからでもよいのだ。どこからでも入ることのできる「日本の文化と触れ合えるきっかけ」になればという。1月から12月までそれぞれ月の初めには歌、終わりのページには四季折々の工作や料理も描かれていて、遊びのツールにもなる。
 以前は祖父母と同居している家庭が多く、日々接していて、この絵じてんに掲載されているようなことは自然に教えてもらえた。しかし、現在では同居している家庭は少なく、ゴールデンウイークや夏休み、年末年始など長期のお休みでないとなかなか接する機会がない。両親も共働きの家庭が多く、季節の行事を一つひとつ説明することは時間的にも無理がある。そんな現代の家庭にもおすすめだ。

■豊かな季節感を身につける

 実際に親がすべての行事を把握しているわけではないし、知っていることと子どもに教えることとは別だ。このじてんは、わかりやすく説明するための参考書でもある。子どもには「なんで?」「どうして?」などと質問攻めをする時期があるもの。そのようなときに、もちろん一緒に読んでもいいし、「じゃあ、調べてごらん」と言って辞書引き学習的に活用してもよい。子どもが自分から調べるきっかけにもなり、そのように促すことも大切なのだ。
 日本人は昔から、四季の移り変わりとともに文化を大事にしてきた。季節の節目となる年中行事は、日常生活にも深く結びついている。現代社会においては、都市化とともに伝統的な行事が家庭から離れつつあるが、最も熱心なのは園かもしれない。園生活で体験する行事をもとに、このじてんを開き確認することで、豊かな季節感を身につけられるであろう。春夏秋冬の行事は、日々の生活の中で大きな意味を持っているのだ。(朝日新聞デジタル&M編集部 加賀見徹)

『sesame』2014年11月号(2014年10月7日発売)より
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=16332