第30回 気仙沼発 ベビーモスリン |AERA dot. (アエラドット)

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第30回 気仙沼発 ベビーモスリン

文・鈴木正晴

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マツオさん(右)と、けせんぬま百貨店店長のササキ(左)

マツオさん(右)と、けせんぬま百貨店店長のササキ(左)

けせんぬま百貨店の店内

けせんぬま百貨店の店内

気仙沼復興市場の中で、日本全国のイイモノを販売しています

気仙沼復興市場の中で、日本全国のイイモノを販売しています

藍工房OCEAN BLUEのフジムラさんご一家

藍工房OCEAN BLUEのフジムラさんご一家

1枚1枚、丁寧に藍染めにしています

1枚1枚、丁寧に藍染めにしています

 マツオさんは元慶応ボーイ。IT企業の社長です。

 彼が今、3年前までは縁もゆかりもなかった宮城県気仙沼市の復興に尽力しています。大学時代の同級生が気仙沼出身で、何か地元の力になろうと活動している姿を見ているうちに、自然とのめりこんでいったそうです。

 ある日、珍しくマツオさんから、「気仙沼の電車は止まったまんまで、仙台にも車で2時間以上かかる。気仙沼に住んでいながら、仙台でも手に入らないような日本のスグレモノを手に入れる場所を作りたいんですよ!」と相談を受けました。

 ちょうど石巻にいる友人タカサゴさんの「何も復興なんか進んでない」の一言でモヤモヤしていた時期。それならば、日本全国、僕の知る限りの商品を提案するから、お店を作ろう!という話になりました。その名も「けせんぬま百貨店」。

 マツオさんから一つだけ約束させられました。

「気仙沼の産品は、すでに他店で扱っているから、その人たちの売り上げを奪わないよう、けせんぬま百貨店では扱わない。その代わり、スズキさんが気仙沼以外の場所で売って、どんどん広めてほしい」

 マツオさんの気仙沼にかける思いに、涙が出そうになりました。僕も一つだけ条件を出しました。

「ぜひそうします。ですけど、よくないものを被災地の商品だからといって、都心で売るようなことをするつもりはないです。本当にいいものを紹介してくださいね。僕らは僕らのやり方でしっかり売ります」

 はたから見たら、ハゲたおっさん同士が、なに安い珈琲飲みながら半べそかいてんだよ、という感じだったかと思いますが、それから半年、けせんぬま百貨店は、気仙沼復興市場のなかで元気に営業中です。

 そして気仙沼から日本百貨店に取り寄せたのが今回の商品。藍工房OCEAN BLUEの藍染めベビーモスリンです。愛知県の知多工場で織り上げられた生地を、気仙沼のお母さんたちが縫い上げ、自らも子育てをしながら被災地の子育て支援をしているフジムラさんが、一枚一枚、藍で染めています。

 使えば使うほど吸水性が増し、柔らかくなるベビーモスリン。独特の立体格子状の織りによって発生するしわが特徴で、通気性、保温性、速乾性にすぐれています。ゆったり織りあげることで空気を含み、ふんわりさらさらな仕上がりです。

 イギリスではこの生地を真四角に織り上げた「モスリンスクエア」が赤ちゃんの子育てに使われています。日本の赤ちゃん用ガーゼハンカチに比べると大きいサイズで、おくるみやシーツなどにも使えます。

 実はこの商品、震災の緊急支援物資としてイギリスから届けられた6000枚のモスリンスクエアがきっかけで、被災地雇用支援の一環として国内で作られるようになったんです。特殊な織り方で、日本では対応する織り機がほとんどないそうですが、有志が全国を探し回って、ようやく見つけたのが愛知の工場でした。

 赤ちゃんに良いということは、もちろん大人にも良い。独特な風合いは一度使うと癖になります。「大」ならお風呂上がりにも十分なサイズです。

 復興だの支援だのといったことはこの際関係なく、さまざまなスグレモノを見てきたひとりのバイヤーとして、ぜひ皆さんに紹介したいモノです。実際に触ってみて、そして毎日の生活に取り入れてみて下さい。

 次はマツオさん、何紹介してくれるのかなー! すごく楽しみです!!


(更新 2015/12/24 )


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プロフィール

鈴木正晴(すずき・まさはる)

 株式会社日本百貨店・代表取締役社長、ディレクター兼バイヤー。1975年神奈川県生まれ。1997年東京大学教育学部卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。アパレル関連の部門で、海外とのビジネスを多く経験する中で、国内の“モノ づくり”文化に根差したすぐれものをより広いマーケットに広める一助となりたいと考え、2006年3月伊藤忠商事を退社。2006年4月に株式会社コンタン(現・株式会社日本百貨店)を立ち上げる。2010年12月には東京・御徒町に、日本の優れものを集める小売店“日本百貨店”を オープン。食・雑貨・衣料雑貨など、全国から様々なこだわりの商材を集め、作り手と使い手の出 会いの場を提供している。著書に「日本百貨店」(飛鳥新社 2012/12)

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