第1386回 モコはかすがい 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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第1386回 モコはかすがい

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モコ(高田さん提供)

モコ(高田さん提供)

 夫婦げんかは犬も食わぬと言うが、わが家に新しくやって来た子犬のモコ(写真、雌、生後2カ月)は、夫婦げんかの火種を事前に食べてくれているのかもしれない。

 結婚5年。私たち夫婦は多忙によるすれ違いから会話がめっきり減り、淡々とした日々が過ぎていた。

 ふと私は妻と出会った頃の会話を思い出した。近所の犬が朝から鳴くと、「お宅のワンちゃん朝から元気ね」と嫌みの電話をかけてくる人がいるらしいと私が言うと、妻は「人間だって騒がしくすることもあるのにね。人間以外は声も出しちゃいけないの? 世界は人間だけのものじゃないのにね」と言った。

 私は妻のそんな物の見方が好きになった。

「ちょっと寄ってみる?」

 妻とドライブ中、偶然目に入ったペットショップで、私たちはこの子と出会った。

 店員さんに促され、抱っこすると、手放せなくなったのは妻より私のほうだった。

 モコを迎えたその日から、生活は一変した。自分が世話をしなくては消えてしまうような小さな命と共にある。

 おぼつかない足取りで私のもとまで駆け寄ってきて膝に乗った時の、400グラムの命の重みと温かさ。排泄物の後始末をすることを汚いと感じるどころか、「良いうんちが出たね」と話しかけている自分の新たな一面に、自分が一番驚いている。

 先日、モコの体調が悪くなり、すぐ診てくれる獣医さんを探して駆けずり回った。幸い脱水と低血糖が原因で、一晩の入院で済んだのだが、妻は私の大げさな心配の仕方が意外だったようで、「もっとクールだと思っていたのに」とクスクス笑う。そして、夫婦の間に新婚の頃のような会話が戻ってきた。

(高田政明さん/滋賀県/40歳/エンジニア)

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(更新 2020/8/21 )


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