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「今日もワンワンいるかな? あ、いたいた。今日もワンワンに会えてよかったね、おばあちゃん」
保育所帰りの子どもの声が聞こえる。道路からガラス戸越しに犬専用の部屋が見えるので、小中高生はもちろん、犬好きの大人も朝晩立ち止まって声をかけていく。
犬の名前はカウ(写真、雄)。生後すぐに雪の中に捨てられていたのを息子が拾った。体の模様が牛にそっくりだったのでカウと名付けた、と息子は言う。
甘えん坊、寂しがり、わがまま、そしてちょっとばかり利口なカウは、この家で自分が一番偉いと思っている。
朝夕の散歩のときには、夫か息子が身支度を調え、ビニール袋などを持ったのを確かめてからおもむろに餌を食べ始める。それもゆっくりと。朝の忙しいときは、勤めに遅れないかと、見ている私がハラハラする。
カウに馬鹿にされながらも甘やかす夫は「家来」、拾ってくれた息子は「ご主人様」、私のことは「怖いおばさん」とでも思っているらしく、3人に対する態度が微妙に違うのがおかしい。
こんなカウも、散歩に出ると周囲からすこぶる評判がいい。可愛い、利口、品があるなどと声をかけられる。信号や十字路などで姿勢正しく座って待っている姿は、「どうです、ボクは可愛くて利口でカッコいいでしょ!!」と全身でアピールしているようだ。
よく、動物は飼い主に似てくると言われるが、私たち家族に似て外面がいいのだろうと納得している。
拾ってから14年。もう老犬の部類に入るカウだが、見た目は若々しく、老人の私たち夫婦にはカウの元気さが頼もしく思える。これからもできるだけ元気で、私たちの心を和ませてほしいと願っている。
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